




写真1枚目は海岸通の反対歩道から撮影したもの. ビルは手前に建つ地上4階建ての建物で、すぐ奥に建っている塔屋付きの建物は
「新港ビル」です. 神戸港海岸線の主要ルートである海岸通り. 居留地時代、このストリートからすぐ南には大阪湾を望む海岸線でした. また神戸居留地は勅許が遅れるといった歴史背景から一括造成ができず、番地の若い順に造成を進めながら拡大していったため、1桁台の番地が中心となるこの場所はまさに居留地のスタートとともいえる場所です.
その9番地に建つ当ビルは、英国銀行『チャータード銀行』の神戸支店として1938年に完成しました. 特徴的なのが、建物の上下で印象の全く異なる外観です. 下層部はイオニア式ジャイアントオーダーと水瓶の装飾が目立つ彫りの深い新古典主義のスタイルながら、上部はそれらが取り除かれたシンプルモダンな仕様になっています. 現代の腰巻ビルに似たビルが戦前からあったことに内心驚きです. 窓周辺の微細な装飾
(写真4枚目)やメダリオン
(写真5枚目)も見事な装飾です.





角地となる部分には、三角ペディメントが乗っかる立派な入口
(写真1枚目)が両方向に設けられており、青銅製の照明装飾
(写真2枚目)も見事. ビルの設計を手掛けたのはアメリカ人建築家であるジェイ・ヒル・モーガン(J・H・モーガン). 『日本フラー建築会社』の技師長として来日し、その後は横浜を拠点として活躍しました. 「ベーリックホール」や「横浜山手聖公会」など横浜に代表作が残る中で、このビルはモーガンの没年と同年に竣工した遺作となります.
戦争間近という完成もあってか銀行としての使用歴は短く、建物は戦時下に伴い没収. 1967年の売却後は長らく積極的に利用されていなかったようですが、現在は営業室だった吹き抜け空間をカフェとして活用しているようです. そのカフェの入口は当時からのものと思われるレトロな回転扉
(写真3枚目)となっており、当時のものらしきフォント
(写真5枚目)が残っています. 時間の都合でカフェには入れなかったのが悔やまれます.




こちらは西側の外観の様子です. 列柱はドリス式
(写真1枚目)と簡素になっていますが、それ以外のデザインは海岸通り側と同様といった印象. こちら側にはアパレルショップがメインとして入居していました. 植栽に隠れていましたが、当時からのものと思わせるプレート
(写真3枚目)も発見. 北側
(写真4枚目)までいくと彫りの深かった装飾は途中で切れてしまいますが、コーニスの水平帯だけは簡素化してでも伸ばしていました. 裏側であっても2層構成は維持したかったのでしょう.
外観のみ紹介のため、今回はここまでとなります. ネットで調べると、どうやら今後はホテルとしてのコンバージョンが計画されている
(「こべるん」ブログ記事URL )ようで、ホテルとしての新しい活用が期待されます. 神戸は本当に近代建築を愛していますね. 今後のチャータードビルに注目です. 外観だけでも一見の価値あり、できればカフェにも寄っておきたいところです. それでは今回はここまで〜
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神戸建築マップ(神戸港編) - 神戸港周辺をメインとした建築マップ
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