2017/02/28






写真1枚目は海岸通の西方向遠方から撮影したもの. 商船三井ビルは写真中央の淡褐色の建物で、手前には「海岸ビル」が隣り合って建っています. 川崎汽船・日本郵船と並ぶ三大海運会社『商船三井』の名を冠するビルですが、元はその前身企業である『大阪商船』の神戸支店ビルとして1922年に竣工しました. 「綿業会館」や「旧神戸証券取引所(現 神戸朝日ビル)」を手掛けた渡辺節氏の初期の作品であり、大正期の大規模オフィスビルの数少ない現存作です.
海岸通りの近代建築群でも際立って目を引くのが、他のビルにない豪華絢爛な装飾. コーナー最上部の半円ペディメント(写真3枚目)・6階フロアに並ぶメダリオン(写真4枚目)・植物模様の地上アーチ(写真6枚目)など、当時の船舶業の威光を象徴する見事な装飾が並ぶルネッサンス風の佇まい. 地上から荒石(ルスティカ)仕上げの基底部、垂直性をもたせた中間階、装飾的な最上部という3層構成(写真2枚目)は当時米国で一般的だった高層オフィス様式に習ったといわれます.






こちらではビル西側の外観を撮影したものを掲載. 基底部の壁は意外と厚く、窓先に花壇を置く光景(写真1枚目)はおおよそ日本の光景とは思えないほどに優雅. 6階部分のメダリオンを拡大(写真2・3枚目)しても、一体どこまで細かく彫っているんだと思わせる超繊細かつ芸術的なテラコッタ装飾です. 内藤多仲氏の構造設計で完成した7階建ての当ビルは、まだ当時としては珍しい高層ビルとして完成. 豪華な装飾も含めて旧居留地のランドマークとして親しまれたそうです.
写真4枚目以降は西側入口を撮影したものですが、荒石の壁に大きなアーチが設けられた佇まい(写真4枚目)は、さながら洞窟の入口のようです. 入口上部のメダリオンとバルコニー装飾も見事. こちらのアーチ部分にも細やかな装飾(写真6枚目)が施されていますが、よく見ると先ほどコーナー部にあったアーチとは模様が違う様子. 彫りが深いため影の陰影もでており、まさに職人技です.



こちらは海岸通りとは反対側となる北側入口(写真1枚目)です. こちらにも大きなアーチがつけられていますが、先の2つのような派手な装飾はなくサッパリとしています. 当時からのと思われる入口上部の表札フォント(写真2枚目)もいい感じ. 現在ビル全体はテナントオフィスとして利用されており、この入口がエントランス(写真3枚目)となるものの、残念ながら利用者以外の入館はできません. いつかは欧米スタイルの内装も見てみたいものです.
ということでここまでの紹介となります. 訪問当時の地上階部分は『大丸インテリア館』というインテリアショップでしたが、現在は米国発祥のセレクトショップの入店に伴い改装工事が進んでいるようです. 渡辺節氏設計の作品も次第に少なくなっている中で、震災にも耐え抜いて今も現役で活用されているというのは非常に喜ばしい限りです. 探訪の際はぜひ繊細で華々しい装飾を隅々までご堪能ください. ではでは今回はここまで〜
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