




ビルが建つのは「神戸郵船ビル」からさらに海岸通を西に歩いた場所. 現代ビルの街並みに挟まれながら残るホワイトカラーの建物
(写真1枚目)です. 当ビルは『日豪貿易のパイオニア』と謳われた実業家・兼松房治郎
(かねまつ ふさじろう)が設立した『兼松商店(現:総合商社『兼松』)』の本社として竣工. オーストラリアとの貿易を主力としたことから『日濠会館』とも呼ばれました. 本社移転後はテナントビルとして営業しており、2003年に国指定登録有形文化財に指定されました.
設計は「神戸地方裁判所」などを手掛けた河合浩蔵氏の中期作. 正面ファサード
(写真3枚目)は1階基壇部を荒石で仕上げ、それより上のフロアをホワイトタイルで仕上げた2層構成. 河合氏の作品というと
「海岸ビル」や
「新井ビル」といった幾何学装飾メインの後期作しか今まで見てこなかったのですが、こちらの装飾
(写真4・5枚目)は彫りの細かい派手なものになっています. 各コーナー部には隅石
(写真5枚目 両脇)を連続させて、垂直性をもたせているのもポイントです.




こちらは手前歩道から撮影したものをいくつか掲載. 窓上部の派手な装飾
(写真1枚目)に目を奪われがちですが、一方で玄関両脇の装飾
(写真2枚目・トップ写真)は円形等に簡略化されています. 上部のものは勲章みたいなデザインですね. 西側に歩くと、隣のビルとのズレによってわずかに見える西側外壁
(写真3枚目)を確認できます. 奥をよく見ると外壁が途中から赤煉瓦仕上げ
(写真4枚目)になっています.
地震国に不向きとされる煉瓦造であるにも関わらず、1995年の大地震を軽微な被害で乗り切ったと聞くと、煉瓦造の耐震性って運次第なのかなとも思ったりします. ちなみに裏側にまわると赤煉瓦の外壁を見ることができるのですが、探訪当時は正面しか外観は見えないと勘違いして撮影してませんでした.





それでは館内に入っていきますが、入口をはいるといきなり階段
(写真1枚目)です. しかもこの階段は1階から最上階の3階までを一直線に繋いだ大胆なもの
(写真2枚目)で、階段を上がるのが楽しくなってしまいます. 館内は共用部を中央に置いて、その四方にテナントスペースが置かれています. 共用部からみるとクローズな空間なのですが、天井を高くとっているのでそこまで窮屈な印象はありません.
またこの内部空間の極め付けは3階フロア
(写真4枚目)で、天井中央部に設けられたトップライトから柔らかい光が差し込んでいます. 1階から見上げた時
(写真1・2枚目)に、3階フロアが明るくなっているのはこのため. トップライトにはドイツアンティークのステンドグラス
(写真5枚目)がはめ込まれており、色鮮やかに描かれた果実など非常に優美なデザインでした. 神戸港に残る希少なレンガ建築へ、気になった方はぜひ一度. では今回はここまで〜
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