





こちらは2016年の夏に撮影したものです. 三ノ宮からは地下鉄で一駅ありますが、居留地や南京町(中華街)を歩いていたらすぐ着ける距離にあります. 当館はみずほ銀行の前身である第一銀行の神戸支店として完成. 辰野金吾氏設計による辰野式建築で、
「日本銀行京都支店」の翌年に完成した比較的初期の作品です. 戦後は大林組が神戸支店として活用していましたが、阪神・淡路大震災の被害により現在は南・西側の2方向の外壁ファサードを復元・保存しています.
最近まで壁の後ろは駐車場でしたが、夏に訪問した際は後ろで工事が進んでいました. 辰野式ではありますが、よく見られる白御影石の横帯はなく、2階のアーチ窓から放射状に御影石を展開しています. 窓周囲の壁をバックさせてアーチを強調させる表現は、のちの「旧盛岡銀行本店」でも見られるスタイル. 外壁全体の装飾は控えめながら、玄関装飾
(写真5枚目)は豪華に仕上げるのは辰野氏の定番ですね.





写真の前半2枚は東側の外壁ファサードです. 個人的にビビッときたのは建物奥にある鉄格子
(写真2枚目)で、暖かみのある赤煉瓦にボコッと張り出すグレーの格子は監獄の檻のような冷たさがあります. じつは竣工当時の2階窓は丸窓で、建物上部にも立派な屋根が取り付けられていました. しかし神戸空襲で屋根は消失し、復旧工事によって現在のアーチ窓に変更されたそうです.
三角ペディメントが立派な西入口
(写真3枚目)をくぐると、保存された外壁の裏側を見ることができます. 外壁固定用のRC打ち放し壁が横に展開し、その壁の後ろ側から白色鉄骨の構造体
(写真5枚目)が支えています. あくまでもファサードの独立保存を目的した力技ともいえる保存スタイル. 駐車場がまだ稼働していれば鉄骨が力強く並ぶ様子を撮影したかったですが、それはもう叶いそうにありません. といってもこの先なにが出来上がるのか、気になりながらその場を後にしました.





夏の撮影からその後の状況が気になって今年の2月に再訪問してみると、現代的な高層マンションが完成間近といった状況になっていました. 所有の関係上かと思われますが、マンションは辰野氏の外壁よりも少し距離を離して建てられており、ファサードの独立性はある程度確保できているようです. 今までガラス壁で遮られていた中央玄関?
(写真4・5枚目)はマンションの入口になる模様. 辰野式を抜けるとそこは現代マンションとはなかなか見ないシチュエーションです.
長らく駐車場の片隅に残る状態が続いていた神戸支店の外壁が、今後は地下鉄に加えてマンションのエントランスも兼ねるようになります. 個人的にはこれを機にコーナー部の屋根も復元するかなと思っていたのですが、そう理想通りにはいきませんね. 今までと同様に栄町通りのシンボルとしても続くので、神戸の辰野式に興味が湧いた方はぜひ足を伸ばしてみてください. では今回はここまで〜
◆ このスポットに関連する建築マップ
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神戸建築マップ(神戸港編) - 神戸港周辺をメインとした建築マップ
※ マップでは、駅北西部に記された「出入口1」が立地場所となります
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