





駅舎があるのは高架線の北側(山側)で、写真はその外観を撮影したものです. 駅舎は装飾のないモダニズムの佇まいで、ホワイトな外壁と中層部に厚い錆色のキャノピーが水平にグッと伸びているのが特徴的. この手前に神戸駅舎を見たのですが、あのレトロな佇まいと作風が全く違うのに驚きました. 竣工時期もそこまで変わらないのに不思議ですね. キャノピーには、神戸駅舎でも見られたブロックガラス
(写真6枚目)が確認できました.
現在は山陽本線(JR神戸線)の途中駅にある当駅ですが、駅自体は1888年の『山陽鉄道』による兵庫〜明石間開通に伴って完成しており、歴史としてはかなり古い駅です. 路線自体はその後1901年に山口県下関まで開通し、現在のJR山陽本線の基盤を作り上げました. 兵庫駅は完成時の神戸側ターミナルのような存在でしたが、その翌年に神戸駅まで延伸されてしまいます. 東海道線のターミナルが神戸駅ならば、山陽本線のターミナルとして完成したのが兵庫駅でした.






80年以上前のRCキャノピーを撮影しながら内側にまわっていくと、駅のコンコースではない不思議な屋内空間
(写真3枚目)を発見. コンクリートむき出しの高架下空間って感じがいいですが、なぜここだけ空間を広くとっているのか. 初めはここに地上駅ホームがあったのかなと予測しましたが、国土地理院の航空写真でもそれらしいものは見当たらず謎です. 壁や柱の一部にはスクラッチタイル
(写真5・6枚目)が貼られていますが、こちらは神戸駅と比較して色が暗めで渋いです.
設計を手掛けたのは鉄道省建築課で、当時所属していた伊藤滋
(いとう しげる)氏が担当しています. 旧国鉄における数々の駅舎建築を担当し、「鉄道省庁舎(旧JR東日本本社)」や「大阪鉄道管理局庁舎(旧JR西日本本社)」などの鉄道省施設も設計した、国鉄建築の重鎮とよべる建築家です. 伊藤氏設計の現存作かつモダニズムな外観をもつ当駅は、2014年にDOCOMOMO建築に追加選定されました. ちなみにこの駅を見つけられたのもDOCOMOMOリストからでした.






それでは構内に入っていきます. 訪問前の調べでは『三宮駅や神戸駅に負けないレトロな柱が並ぶ構内』と聞いてましたが、柱の大半は耐震改修ということで残念な姿に. 辛うじて当時のまま残る中央2本の柱
(写真3枚目)を見ると、胴はベージュの石材で柱頭はラッパ型. 柱頭ではなく高架の構造部分に装飾がされているのが面白く感じます. 床タイルの一部はさらに四つに細分化されており、鉄道の車輪らしき模様
(写真4・5枚目)が入っていました. 東には高架下通路
(写真6枚目)が通っていますが人気はなく、なぜここに通路があるのかが謎なポイントです.






今回は改札からホームまでの様子もご紹介. こちらは工事されていなかったので、竣工時からの状態が残っています. 改札部の柱の接合部分がギザギザになっている
(写真1枚目)のが実にユニーク. ホームへ向かう階段手摺も丸みを帯びた造形
(写真2・3枚目)になっているのがいいですね. このすぐ隣の階段
(写真4枚目)をのぼると、そこには中央に丸柱3本が並ぶ「中2階」
(写真5枚目)とよばれる広いスペースがあります. ここのハンチにもわずかに装飾があるのが細かいですね.
この中2階の南側には鉄道ファン御用達の「和田岬線ホーム」
(写真6枚目)が存在します. 和田岬線の線路途中には川崎重工の車両製造工場が存在し、各鉄道会社の新型車両が輸送出庫されるニュースでよく話題となる路線です. 和田岬地区に展開する工場通勤者向けの路線で、ラッシュ時以外は運行していません. しかしラッシュ時はこの中二階が多くの人でごった返してしまうそうです. そう考えると、あの中2階のだだっ広いスペースは決して無駄とはいえなさそうです.
今回はここまでです. 駅舎もモダニズムで鉄道ファンも一目置くという、ハード・ソフト共に面白い駅. しかし駅としての冷遇っぷりは凄まじく、この駅に新快速は止まりません. かつての神戸港である『兵庫津』が近いこともあって名付けられた県名駅ながらも、三ノ宮や神戸とは異なって閑散としているのが寂しい感じです. 神戸に来たら、ぜひこの鉄道省のモダニズム駅舎にも足を運んでみてください. 今回で神戸港特集は終了です〜
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