




最初は最寄駅となるJR紀伊田辺駅からの様子を. 道が入り組んでいるためわかりにくい部分もありますが、顕彰館自体は駅からそう遠くない場所にあるのでアクセス性は良いです. 道中の地名には『下屋敷』や『中屋敷』といった地名も見られますが、かつてこの一帯は「田辺城」を中心とした城下町でした. 慶応から明治にかけては田辺藩・田辺県といった独立の藩・県が設けられ、その中心市街地として栄えます. 現在の城は水門と石垣を僅かに残すだけとなっています.
道中にある案内板を頼りにしながら、閑静な住宅街の道を歩いて駅から5分程度で到着. 道路北側から見るとシルバーメタリックな外観
(写真4枚目)が目立ちますが、正面までいくと建築雑誌で見た木格子のデザイン
(写真5枚目)が色鮮やかに広がる光景にワクワクします. 南側には旧邸の屋根
(写真3枚目 奥)も見えています.




顕彰館の外観を掲載しながら建物の説明を. 南方氏の逝去から研究資料はご遺族によって長らく旧邸内に保存されていましたが、2000年に南方氏直系としては最後の子孫となる長女の方が逝去し、研究資料は田辺市に遺贈されました. これを契機として南方氏の遺産の恒久保存と学問成果の発信を目的として、2006に開館したのがこちらの顕彰館です. 設計は矢田康順
(やだ やすより)氏と堀正人
(ほり まさと)氏による共同制作で、両者とも磯崎新アトリエ出身の建築家です.
外観の最大の特徴となる木格子は、森林県和歌山らしく紀州産材を使用. 日本古来の貫工法を基に考案された『貫格子壁』は見た目だけでなく耐震壁としての役割も担い、内部と外部の連続性を確保した『伝統工法の新しい継承』としてデザインしたと矢田氏のHPでは紹介されています. 粘菌を追い求め植物を愛した南方熊楠というテーマ性もあって、この巨大な木格子は実に良いものに感じられました.







それでは館内へ. 研究資料も保管する貴重な施設でありながら、入館料無料というのには大変驚きました. 館内は一部吹き抜けの2階建て構成. 外から見えた貫格子壁
(写真2・3枚目)は、格子の間から通り抜けた自然光がリズミカルな陰影をつけていたのが印象的でした. 白壁にガボッと開いた大窓
(写真5枚目)の先は収蔵庫. 木の本来の素材形態を重視して集成材は用いず、屋根材は一部をスチールで構成しています. どれほど大量の木材を使ったんだろうかと思うほどに、木の密度の濃い温もりのある空間でした.
南に隣接する文化財「旧南方家住宅」は大人300円の有料ゾーンとなるため、現時点では写真掲載を控えます(顕彰館本館の掲載はスタッフからOKをもらっています). 南方氏ゆかりの田辺の地に建つ木材のインパクト満点の文化施設へ、駅近ですので興味が湧きましたらぜひ見ておきたいスポットです. それでは.
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