やまなみホール - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

やまなみホール

           
0252:やまなみホール メイン

0252 - やまなみホール
竣工:1991年
設計:黒川紀章
住所:京都府相楽郡南山城村北大河原久保8

皆様どうも. 5月末から更新停止が続いていましたが、久々の建築紹介となります. 読者さまにはご心配をおかけしましたことを、深くお詫び申し上げます. さて、当面は今年(2017年)3月に訪問した近畿各県の建築を中心にご紹介します. 今回は京都府の最南東部にあり、府内唯一の村としても知られる南山城村より やまなみホール(南山城村文化会館)の探訪レポートをお送りします.
0252:やまなみホール JR大河原駅

0252:やまなみホール 駅からホールまでの道のり

0252:やまなみホール 木津川からの眺め①

0252:やまなみホール 木津川からの眺め②

0252:やまなみホール 木津川の眺望

では初めは最寄駅のJR大河原駅(写真1枚目)から. 駅の属するJR関西本線は名古屋〜大阪難波間を三重・京都・奈良経由で結びますが、そのうちの三重県亀山から京都府加茂は1〜2両程度の気動車が走る単線ローカルになっています. 各駅のやたらと長いホームは、かつて長大編成の貨物車両が往来した最盛期の名残ともいえるものです. 駅を降りて手前の道路を東へ歩くこと5分ほど. 道路の向こうに特徴的な屋根を乗せたホールが見えてきました(写真2枚目).

ホールのすぐ南には木津川が流れており、最初はその河川敷から外観を眺めることに. 山々に囲まれた雄大な緑の中にドンと鎮座するコンクリートグレーの外観. 色合いは冷たく異質ながらも、モコモコとした雲のような緩いカーブが連続する屋根が、建物を柔らかい雰囲気にさせています. 横に連続するガラスの向こうからは、後ろの雄大な木津川の風景(写真5枚目)がどう見えるのか、個人的には非常に気になるところです.
0252:やまなみホール 正面の外観

0252:やまなみホール 並ぶ列柱①

0252:やまなみホール 並ぶ列柱②

0252:やまなみホール 列柱の内部

0252:やまなみホール 2階から列柱をみる

写真の1枚目は正面玄関からの眺めです. 2,500人程度が住む南山城村の文化会館として建てられたこのホールは、戦後日本を牽引したメタボリズム建築家・黒川紀章氏の設計で1991年に竣工しました. 近畿のほぼど真ん中に位置する自然豊かなこの場所に、黒川建築があるというのには当初驚きました. ホール前道路のすぐ隣をJR線が走っているので、車窓からでも建物のインパクトがよく伝わります.

興味深いのは入口へのアプローチに沿って並ぶ近未来的な塔(写真2枚目以降)です. 田の字型の立方体鉄骨フレームと、内部のクリスタルなキューブで構成された頭頂部のデザインは、このホールの3年後に完成する代表作「和歌山県立近代美術館」のオブジェとよく似たデザイン. 違うポイントはオブジェの壁に描かれた月の満ち欠けらしき模様(写真3枚目)や塔の中に入れる(写真4枚目)部分かと思いますが、あの塔のプロトタイプ的なものがあっことに驚きました.
0252:やまなみホール 突き出す木

0252:やまなみホール 力強いキャノピー

0252:やまなみホール キャノピーから列柱をみる

0252:やまなみホール 屋根①

0252:やまなみホール 屋根②

階段を上って2階の野外スペースへ. JR線の向こうに山々が連なり、この一帯が木津川と山に挟まれた険しい地形であることがわかります. よくこんな場所に建てたな〜と思いつつ散策していると、南西のエリアに特徴的な屋根をつけた休憩スペース(写真2枚目)を発見. 半円に近い断面を持つ巨大なコンクリート屋根が、薄い壁2枚で絶妙に支えられています(写真3枚目). 恐らく屋根は周りのフレームだけだと思われますが、力強さと軽快さが混じり合う見事なデザインです.

遠くからではわかりにくかった屋根部分(写真4枚目)は、グレーのスチール板を湾曲させて見事なカーブをつくっています. 木津川側の壁は手入れが行き届いたような綺麗なコンクリ壁でしたが、山側(写真5枚目)の壁はかなり汚れています. 山からの風で落ち葉やホコリが壁に当たって汚れるのでしょうか、あくまでも憶測ですが. 雲のようだと形容したこの屋根は、この地区周辺に連なる山々の『山並み』がモチーフ. だから施設名も「やまなみホール」なんだと思います.
0252:やまなみホール 入口

0252:やまなみホール 案内図

0252:やまなみホール ホワイエ①

0252:やまなみホール ホワイエ②

0252:やまなみホール ホワイエ③

0252:やまなみホール ホワイエ④

それでは館内に入っていきます. 入口にあるハートマーク型の窓が可愛い. 誰もいないのに玄関は空いていたため、一応事務室へお伺いして撮影承諾をもらいました. 突然のご訪問にもかかわらず、丁寧にご対応いただいた職員様に感謝です. 村の文化会館ということで規模は小さく、館内は一般的にホール後ろ側のホワイエとホールという2つの空間(写真2枚目は案内図)で構成されています.

ホワイエに入ってすぐ目の前に飛び込んできたのが、木津川河川敷からも確認できた横長のガラス開口(写真2〜4枚目)です. 河川敷からも十分に芝らしい眺めでしたが、それよりも高い位置から雄大な木津川の自然を満喫できるのは実に羨ましい限り. ここまで眺望が見事なホワイエを見たのは、建築探訪初めてのことです. ワイドな眺望が途切れないようにリブガラスで構成していて、眺望の取り込み方が上手いなと感じがならボーッと眺めていました.
0252:やまなみホール ホール①

0252:やまなみホール ホール②

0252:やまなみホール ホール③

0252:やまなみホール ホール④

0252:やまなみホール ホール⑤

ホワイエを撮影していると、若い職員から「ホール見ますか?」とお誘いが. ご好意に深く感謝しつつホール内を見学させていただきました. 機材調整中だったのも幸運でした. シート数およそ380席と小規模ながら、有機的なグネグネしたデザインが奇抜なホール空間. 『母胎』をイメージしたダイナミックなこの空間は、音響設計に優れているということで音楽家や歌手の方にも好評とのこと. ホールが小さい分、空間との一体感が密に感じられるのが良いなと思いました.

ローカル線の途中駅にある黒川建築ということでフラッと立ち寄った感じの訪問だったのですが、建物は想像以上にユニークで、豊かな自然も満喫できた素晴らしい探訪になりました. 気になっていた内部も見学させていただき、施設の職員の方々には重ねて厚く御礼申し上げます. では今回はここまで〜


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