




市庁舎の最寄りは京阪石山坂本線の別所駅で、駅は市役所のすぐ手前にあります. JR線ですと湖西線の大津京駅から徒歩でいけます. ただしこの別所駅、2018年3月からは『大津市役所前駅』駅に改称されてわかりやすくなる予定です. 駅を降りるとすぐ手前に見えるコンクリートグレーの5階建ての建物が市庁舎の本館です. 丸柱と梁・巨大な水平庇で構成された特大フレームの中に、業務機能のハコと議場機能のハコが内包された構造がダイナミックです.
庁舎手前の県道方向に軽く70mはありそうな大きい庇を周囲の円柱が受け止めていますが、円柱が以外と細いため、フレームの力強さとは裏腹に軽快な印象を受けました. 業務棟をは各階に3本の水平ルーバーを通して簾(すだれ)のようなデザイン
(写真3枚目)に. 他にも小さく飛び出した出梁や庇裏の格天井
(写真5枚目)など、随所に和風意匠が施されているのもポイントです. かつての都や文化都市としての大津のイメージの反映にもみえます.






庁舎本館の北側に建っている時計塔
(写真1・2枚目)は庁舎全体のモニュメント的存在. 近江宮遷都を行った天智天皇は皇太子時代に日本初の水時計をつくったと伝えられており、時計塔はその故事にならってデザインされたものとされています. 素材はコンクリートながらも、竹のように美しく組まれた塔が空に向かってスーッと伸びる様子は実に美麗です.
3代目である大津市庁舎は、県道47号線の西側に大きく3棟の施設が建ち並んでいます. 一番南に建つのが1967年竣工の「本館」、その北隣には7階建ての「新館」
(写真3枚目 中央)、さらに北隣には1971年竣工の「別館」
(写真4枚目以降)があります. 別館も佐藤武夫氏設計の建築で、DOCOMOMOでは本館と別館の2棟が選定されています. 私も別館の存在は訪問時に初めて知りました. 本館の構造をコンパクト化した、淡褐色の外壁が特徴の3階建てです.





それでは本館内へ入っていきます. 1階玄関部分は半野外のピロティになっている
(写真1枚目)ためスッと入れます. 庁舎受付の方にお話をして、内部の撮影・掲載OKのお許しをいただけました. ピロティを奥に進んでいくと、外からも見えた格天井がトップライトとなった大空間
(写真3枚目以降)が. 業務空間や議場が入るハコとハコの隙間に設けられた空間です.
吹き抜けというと明るく広いイメージなのですが、ここでは天井の淡い自然光や各階廊下の照明灯で全体的にボウっと照らされて、どこか遺跡に近い雰囲気です. 一般的な吹き抜け空間のイメージとは真逆ながら、それがこのコンクリート大空間を独特で印象的なものにさせています. 細長い塔のような部分
(写真5枚目 左側)は主に階段室で、各々のハコを繋ぐブリッジの役割も担っています.





こちらは別館. 本館庇の格天井は鮮やかな赤でしたが、別館の庇は淡いピンク色
(写真1・2枚目)です. 別館のエントランスホールは2層吹き抜けで、本館よりは若干広め. 大きい特徴はトップライトで、本館が細やかな十字網状だったのに対し、こちらではグリッドごとに筒状にくり貫いて自然光を大きく取り込んでいます
(写真4枚目). トップライト一つにしても、採光への印象が全く異なるのが面白いです.
今回はここらへんで. 写真で見たときの構造のダイナミックさが気に入って探訪したわけですが、内部の吹き抜けがクローズな印象でびっくりしました. ただ悪い意味ではなく、それぞれのブロックで起こっている人の距離が近く、内の繋がりが濃密な印象でした. 和風でもあり遺跡的でもあるデザインも相まって見事な空間をつくり出していました. これで現役の庁舎なんですから凄い. 滋賀の貴重なモダニズム建築として残っていってほしいものです. では.
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