2017/08/18






JR徳島駅からまっすぐ南へ伸びる『新町橋通り』に沿って歩き、新町橋を渡りきると新町地区に到着. 新町橋通りの奥には徳島市街地を一望できる『眉山(びざん)』や「阿波おどり会館(設計:東畑建築事務所)」(写真1枚目)が見えますが、目的のビルは橋を渡ってすぐ南へ伸びる一方通行道路の先にあります. ビルのある東船場町は数社の銀行支店が並び、かつては日本銀行事務所が設置された(現在は西船場町)こともあるほどの金融街として栄えました.
雑居ビルが立ち並ぶ街並みの中に、茶褐色スクラッチタイルの鮮やかな外壁が目立つレトロな建物が見えてくると到着です. ビルは北側の一部を塔屋のように盛り上げたRC造3階建て. 上下に大きく開放的に設けられた上げ下げ窓(写真4枚目)がいい感じです. 塔屋部の2階から3階の窓にかかる付け柱の装飾(写真3枚目)や、コーニスの真下に飾られたいささかアラビア風な装飾(写真5枚目)など、外観主要部に飾られたテラコッタ装飾がとても魅力的です.





当ビルは石油等の卸売業を営む『高原商店』の社屋として1932年に竣工. 東船場町は金融街と先述しましたが、こちらも完成当初は『阿波農工銀行』の本店として使用されたことも. 設計は名古屋近代建築の祖・鈴木禎次氏で、本サイトでは「高島屋東別館」で初紹介しています. 1945年に壊滅的な被害を受けた徳島空襲を耐えた稀少な戦前建築であり、現在は裏手の「新館」(写真1枚目 奥)と一体化させて「国際東船場113ビル」の一部として活用されています.
写真2枚目以降は主に1階部分のデザインに注目して撮影したものを掲載. 水平性を強調させつつ、途中でカクンと曲がる庇(写真2〜4枚目)がユニーク. 北側にある扉周りの石装飾(写真3枚目)に、並々ならぬ重厚感があります. 南側にある丸窓の幾何学模様を組み合わせた飾り装飾(写真5枚目)も、なかなかオツなデザインでした.





内部は新館増結時に大きく改修されたと思われ、ビルの玄関(写真1枚目)を入ると新町川沿いの遊歩道(写真2枚目)に出られるようになっています. 新町川沿いに建つ新館は、一部のカーテンウォールが湾曲した現代チックな建物. ビル内にはカフェやゲストハウス、全国的な知名度のあるアニメ制作会社のスタジオやその直営カフェがあったりと、かなり今風なコンテンツが充実した面白いビルです. 新町川の奥(写真4枚目)には前回紹介した「徳島県郷土文化会館」が見えています.
高原ビルの2階部分は「新町川文化ギャラリー」として一般利用されており、徳島空襲の戦災を防いだドイツ製亀甲網入窓ガラスや当時からの躯体などを直に見ることができます. 当日は時間の都合で長居できなかったのですが、先述の窓ガラスは戦火で亀裂が入った状態で保存されているようです. 戦前の徳島の盛況ぶりを今に残すレトロビルが、市民交流という形でオープンに活用されていることは大変素晴らしく感じました. 徳島駅から近いので、ぜひ一度ご来訪ください.
※ Googlemapでは「国際東船場113ビル」として表示されています
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