徳島県立文書館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

徳島県立文書館

           
0260:徳島県立文書館 メイン

0260 - 徳島県立文書館(旧徳島県庁舎)
竣工:1930年(県庁舎竣工時) / 1989年(移築保存)
設計:佐野利器
住所:徳島県徳島市八万町向寺山

皆様どうも. 時事的なお話ですが、今月14日に「新国立劇場」の設計者で知られる建築家・柳澤孝彦氏がお亡くなりになりました. 享年82歳. 近年では「上田市立美術館」にて2016年学会選奨を受賞されていました. 事務所公式サイトを見る限りでは大阪府堺市で建設中の「堺市民芸術文化ホール」が、関西唯一にして同氏最後の作品となると思われます. ご冥福をお祈りします.

気を取り直して徳島の建築スポット特集を進めていきます. 今回は徳島市から南西へ5kmほど離れた場所にある「徳島県文化の森総合公園」の園内に建つ徳島県立文書館です. 公文書館として建つ当館は、1986年まで徳島市中心部に建っていた旧徳島県庁舎を移築保存したレトロ建築です.
0260:徳島県立文書館 文化の森総合公園①

0260:徳島県立文書館 文化の森総合公園②

0260:徳島県立文書館 文化の森総合公園③

文化の森総合公園へは徳島駅から出発するバスか、JR牟岐(むぎ)線 文化の森駅から徒歩といった手段があります. 公園は小高い山の中腹に広がるので、歩きがしんどい方は徳島駅からの直行便バスが楽に移動できますが、便の本数は少なめです. 園内には近代美術館・博物館・鳥居龍蔵記念博物館・図書館など県立の文化施設が集積しており、県内の一大文化拠点となっています. 先述の図書館を除く3施設が入る「三館棟」(写真3枚目)は、建物としてなかなかのデカさです.
0260:徳島県立文書館 園内マップ

0260:徳島県立文書館 文書館への並木道①

0260:徳島県立文書館 文書館への並木道②

0260:徳島県立文書館 正面外観全景①

0260:徳島県立文書館 正面外観全景②

0260:徳島県立文書館 正面外観2階部分

文書館は中央ゾーンから少し東に離れた場所に独立して建っているので、東に伸びる並木道(写真2〜3枚目)に沿ってしばらく歩くと到着. ベージュカラーのタイル外壁で仕上げられた、左右対称の外観を有する文書館. 中央部に飾られた絢爛の装飾が、かつての県庁としての威光を示します. 三方を山に囲まれた緑豊かなロケーションに建つことから、県庁舎がすごい場所に移築されたな〜と思ったりも.

かつての旧県庁は徳島県万代町の一角に、新町川に正面を向けた形で1930年に竣工しました. 設計を手がけた佐野利器(さの としかた)氏は昭和期を中心に活躍した構造学者・建築家であり、建物に地震力を一定の水平力として考える『震度法(水平震度)』を提唱し、日本の耐震構造(設計)学の礎を築いたとされています. 佐野氏によって手がけられた旧徳島県庁は耐火性のあるRC造建築として初期のものとされ、徳島大空襲の戦火を耐えた数少ない被災建造物でもありました.
0260:徳島県立文書館 車寄せ

0260:徳島県立文書館 基壇部の石張り

0260:徳島県立文書館 上層部ファサード

0260:徳島県立文書館 玄関上のテラコッタ

0260:徳島県立文書館 玄関スペース①

0260:徳島県立文書館 玄関スペース②

1986年に現在の県庁舎(設計:日本設計)が竣工して機能移転するとともに、長く親しまれてきた旧県庁の保存という県民の要望に応え、公文書館として1989年に移築保存されました. 移築保存とはいうものの、建物は設計図を基に復元した新築で、かつて川沿いに長く伸びた両翼部は大幅に短縮されています. そこに旧県庁からの車寄せ縁石(写真1枚目)・丸瓦(写真3枚目 上)・テラコッタ(写真4枚目)などの旧建材を使用して、当時の旧県庁の雰囲気を忠実に再現しています. 最近の「ダイビル本館」と似たタイプにあたる、旧建材活用型の復元保存ですね.

文書館への入館は無料(撮影は禁止)で、各企画展ごとに関わりのある公文書・行政資料を幅広く展示しています. 玄関上部にある石のレリーフ(写真6枚目 上)や玄関ドアの木部も旧県庁からのもの. 旧県庁の象徴であったとされる玄関スペース(エントランス)は一部の寸法が縮小されているものの、旧県庁から引き継がれた重厚なタンギール材木製手摺は一見の価値ありです. オリジナルでの保存は叶わなかったわけですが、姿形をある程度変えながらも、かつての徳島を象徴した県庁はここに残り続けていると感じられた探訪となりました.


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