


文化の森総合公園へは徳島駅から出発するバスか、JR牟岐(むぎ)線 文化の森駅から徒歩といった手段があります. 公園は小高い山の中腹に広がるので、歩きがしんどい方は徳島駅からの直行便バスが楽に移動できますが、便の本数は少なめです. 園内には近代美術館・博物館・鳥居龍蔵記念博物館・図書館など県立の文化施設が集積しており、県内の一大文化拠点となっています. 先述の図書館を除く3施設が入る「三館棟」
(写真3枚目)は、建物としてなかなかのデカさです.






文書館は中央ゾーンから少し東に離れた場所に独立して建っているので、東に伸びる並木道
(写真2〜3枚目)に沿ってしばらく歩くと到着. ベージュカラーのタイル外壁で仕上げられた、左右対称の外観を有する文書館. 中央部に飾られた絢爛の装飾が、かつての県庁としての威光を示します. 三方を山に囲まれた緑豊かなロケーションに建つことから、県庁舎がすごい場所に移築されたな〜と思ったりも.
かつての旧県庁は徳島県万代町の一角に、新町川に正面を向けた形で1930年に竣工しました. 設計を手がけた佐野利器
(さの としかた)氏は昭和期を中心に活躍した構造学者・建築家であり、建物に地震力を一定の水平力として考える『震度法(水平震度)』を提唱し、日本の耐震構造(設計)学の礎を築いたとされています. 佐野氏によって手がけられた旧徳島県庁は耐火性のあるRC造建築として初期のものとされ、徳島大空襲の戦火を耐えた数少ない被災建造物でもありました.






1986年に現在の県庁舎(設計:日本設計)が竣工して機能移転するとともに、長く親しまれてきた旧県庁の保存という県民の要望に応え、公文書館として1989年に移築保存されました. 移築保存とはいうものの、建物は設計図を基に復元した新築で、かつて川沿いに長く伸びた両翼部は大幅に短縮されています. そこに旧県庁からの車寄せ縁石
(写真1枚目)・丸瓦
(写真3枚目 上)・テラコッタ
(写真4枚目)などの旧建材を使用して、当時の旧県庁の雰囲気を忠実に再現しています. 最近の
「ダイビル本館」と似たタイプにあたる、旧建材活用型の復元保存ですね.
文書館への入館は無料(撮影は禁止)で、各企画展ごとに関わりのある公文書・行政資料を幅広く展示しています. 玄関上部にある石のレリーフ
(写真6枚目 上)や玄関ドアの木部も旧県庁からのもの. 旧県庁の象徴であったとされる玄関スペース(エントランス)は一部の寸法が縮小されているものの、旧県庁から引き継がれた重厚なタンギール材木製手摺は一見の価値ありです. オリジナルでの保存は叶わなかったわけですが、姿形をある程度変えながらも、かつての徳島を象徴した県庁はここに残り続けていると感じられた探訪となりました.
- 関連記事
-
コメント