2015/12/03


建物の『顔』でもあるファサードがここまで大胆に表情を変える建築が日本に他にあるでしょうか. まさに建物全体が光る広告塔、時にはカナ文字の『ユニクロ』になれば英文字『UNIQLO』に早変わりします. 英文字は初め『UNQL』しかないやんと思ったのですが、横側に『I』と『O』の2文字があって広告に立体感が出ています. 写真はありませんが昼間は全面真っ白で、昼の白は白でも存在感を放ちまくってます.
外壁に十字グリッド状に膨らんだツヤのある膨らみは『ETFEフィルム』と呼ばれる表面材でできており、これが一辺2.7mの正方形として160個ほど取り付けられています. 『ETFE』とはフッ素樹脂の意味で、素材としては厚み250μm(マイクロメートル)という非常に薄っぺらいフィルムを内部から膨らまして使用しています. ドイツの「アリアンツ・アレナ(設計:ヘルツォーク&ド・ムーロン)」や北京五輪の「北京国家水泳センター(設計:PTW)」の表面材として幅広く使用され、日本での使用はこの店舗が初となるということです.

この店舗を設計を手掛けたのは建築家 藤本壮介(ふじもと そうすけ)氏です. 2000年の青森県立美術館の設計競技で2位となる優秀賞を経て脚光を浴び、2006年に手掛けた「精緒障害児短期治療施設」で日本建築学会大賞を受賞しています. 2000年以前はニート(wiki談)ということで、そこから設計競技(30歳前後)わずか8年で学会大賞と、スピード出世同然の経歴をもつ建築家です. 全面ガラス張りの「House NA」や建物全棟が銀色ピカピカの「せとのもり住宅」など斬新な住宅デザインを手掛けています.
この店舗のコンセプトは大阪の街中に真っ白い箱をという何とも大胆かつストレートなものですが、ただのペンキ塗りではない、挑戦性を内包したものということでETFEフィルムという日本では使用されなかった、ある意味挑戦的な素材にしたということです. 私はこの『2.7m平方のグリッド』が大きすぎず小さすぎないという絶妙な大きさだなと感じて調べてみると、どうやら風圧に耐えうる最大寸法として決定しているということです.

こちらは商店街からの入口写真ですが、至るところに鏡、鏡、鏡…どこが柱でどこが天井か、そんなモノの境界線すらも隠れてしまっています. 内部は地下も含めた5層構造、中央にはエスカレーターのある4層ブチ抜きの吹抜けとトップライトがあり、先程述べた鏡面はエスカレーターの裏面からスラブの小口までという徹底ぶり.
藤本氏はここで『効率よく見つける=検索性(合目的性)』と『心地よく彷徨う=散策性(脱目的性)』の両立を狙い、さまざまな階層にアクセスするという空間を目指しているということで、初の店舗設計でこのような思考を織り込んだ、前衛的なデザインに藤本氏の妙々たる空間センスが伺えます. 実は心斎橋は外観だけとって時間切れ〜となってしまったので、この内部の感想は後日ということで. もうしわけないです!
もうすぐクリスマスシーズンということで、この店舗も緑ベースのカラフルなクリスマスファサードになる(かも?) 興味のある人は是非心斎橋まで足をお運びを! それでは今回はここまで〜
【追記 2016.2.20】
年明け間もない時期ですが、昼の外観&内観を実際に訪問してまいりました. UNIQLOロゴ全開な夜の様子からは一変して、昼の外観はコンセプト通りの『真っ白い箱』です. しかしながら周辺の建物の方が高いために日陰ができやすく、肝心な白さが中途半端になってしまった印象を受けます.
玄関を入るとそこには数体ほどのマネキンがあるのですが、このマネキンの展示方法が非常にユニークです. 写真からもわかるように、このマネキンは天井に吊るされたワイヤーに固定された宙吊りの状態になっていて、ワイヤーが動くことで1階から4階までの吹き抜けの間を上下しながら動いています. まさに宙に浮くマネキン、見ていた子供達もこのマネキンに興味津々様子でした. 4階にはトップライトがあり、いい感じの自然照明を空間全体に与えています.
柱・壁、そして階段の天井部までがビッシリと鏡面で設えられた店内ですが、あまりにも多すぎて目が疲れてしまうというのが正直な感想です. とくに天井面にある鏡面は反射方向の関係上、床が天井にあったり人の頭が上に見えたりと…なんか空間感覚がおかしくなりそうです. 客はまだしも日中店内にいる店員は疲れないんですかね〜 外観真っ白、内観は鏡と、そんなギャップ性も感じれた面白い訪問でした.



※ お詫び
写真健全化に伴い、以前まで掲載していた館内写真5枚の公開を停止します. 大変申し訳ございませんでした.
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