




初めは美術館の最寄駅であるJR大聖寺駅
(写真1枚目)からです. 付近には加賀市役所が建つ加賀市の中心駅ですが、多くの特急はお隣のJR加賀温泉駅に止まります. 1971年までは当駅から北陸鉄道山中線が伸びて、加賀温泉郷のひとつである山中温泉を結んでいました. かつてこの一帯は加賀藩の支藩『大聖寺藩』の大聖寺城下町として栄え、加賀を代表する磁器『九谷焼(くたにやき)・古九谷(こくたに)』発祥の地として知られます. 駅前にはそれを示す石碑
(写真2枚目)があります.
美術館へは駅前ロータリーから真西へ伸びる、看板の立った細い道
(写真3枚目)に沿って歩きます. 徒歩5分程度で到着する交差点の向こうに、広大な緑のフィールドと美術館の看板
(写真4・5枚目)が見えてきたら到着です. 奥手にうっすらと、薄い赤褐色の色合いをした美術科屋根の瓦
(写真5枚目 右奥)が見えています.






美術館のアプローチも整備されたこの緑の空間は『古九谷の杜』という愛称がついた公園です. 公園の西側に小高い山が広がってるため、奥まで緑が連続しているのがいい感じ. 奥へと進むと、巨大な石で門型に組みあがった謎のオブジェ群
(写真3枚目)を発見. よく見ると上から水が流れ落ちて水路になっている. 更に奥には同様の石のオブジェに加え、鉄でできた樋の連続するオブジェ
(写真5枚目)が何個も設置されていて、どこか遺跡のような面白いデザインでした.






遺跡の雰囲気漂うミステリアスな公園の北側に、美術館の建物と玄関があります. キャノピー
(写真2枚目)は削り仕上げと杉板のコンクリート、色鮮やかな陶器タイルの組み合わせが見事です. 建物の設計を担当したのは「名護市庁舎」が代表作として知られる象設計集団. 美術館のHPでは丹下研出身の女性建築家である富田玲子
(とみた れいこ)氏が担当したと解説されています. 竣工は2001年と作品群としては後期のもの. 「湯布院美術館」が閉館しているため、HPの作品リスト内では現在唯一の美術館作品であろうと思われます.
先に紹介した、遺跡のような公園空間の設計も富田氏が担当. 当日は大聖寺城下町まで足を延ばす時間がなかったため気づかなかったのですが、昔この一帯は旧大聖寺川による洪水が頻発した水の町で、城下町内に幾つもの水路が伸びているとのこと. この親水のデザインは、そういう大聖寺の水路文化を反映させたものだそうな. 実際に近所の子供達が落ちてくる水を見てはしゃいでいる光景も見れたので、こういう環境デザインが非常に上手いと感銘を受けました.







では館内へ、風除室に置かれた傘置き
(写真1枚目)が面白い造形. 入館料一般500円で、受付の方とお話しして1階エントランスと2階カフェの空間撮影であれば掲載もOKとのことでした. 乳白色系の白壁と木の組み合わせが暖かい、どこかホッとさせる空間. エントランスの柱には九谷焼
(写真3枚目)、床には福井県足羽山で採れる『笏谷石(しゃくだにいし)』
(写真4枚目)を使用. どちらもここ大聖寺と縁の深い素材で、地域性を反映したデザインとなっています.
緩やかにカーブする階段手摺
(写真5枚目)に沿ってゆっくりと2階へ. ショップと茶房「古九谷」がある2階休憩フロア
(写真6・7枚目)は、幾何学模様の天井が奥まで連続する優雅な空間. 勝手ながらF・L・ライトを連想してしまうこの幾何学デザインが、北側のハイサイドライトからの光でボウっと照らされるのが素敵でした.
『色絵磁器の王者』とも称される、その見事な絵付けを特徴とする古九谷(九谷焼). この美術館では「青手」「色絵 (五彩手)」「赤絵 (金襴手)」という3つの絵付けスタイルごとに展示室を設け、中庭を周回するように配置されています. 各展示室も土の洞窟のような空間、和室のようなデザイン、室内黒で統一されていたりとバラエティ豊か. 中庭以外にも2つの庭が配置されていて、緑に癒されたり水盤が美しかったりと飽きませんでした. 色絵見事な九谷焼の展示品も素晴らしい、大聖寺城下町観光とセットでご来訪したい建築スポットです.
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