2017/09/07





まずはJR加賀温泉駅から. 現在は北陸新幹線延伸に向けて仮説駅舎で営業中. 駅の裏には高さ73mの巨大観音像(写真2枚目)が見えています. 現在はJRの各特急が停車する加賀市の拠点駅ですが、当初は『作見駅』という普通電車しか止まらない駅でした. 1960年代、この両隣にある大聖寺・動橋の両駅が加賀温泉郷の玄関として特急停車駅をめぐり激しい争奪戦に. 腹に据えかねたJRは、その間にある作見駅を加賀温泉駅として特急駅に格上げして決着させるという、極めて異例の経緯で誕生した駅です. 普通駅から将来新幹線駅へ、いや〜大出世ですね.
駅から各温泉地への移動はバスか車(レンタカー)になります. 片山津行きの路線バス(写真3枚目)は日中2時間に1本と少ないので、バス利用の際は時間に注意しましょう. ただ、乗ってしまえば総湯の手前にバス停(写真4枚目)があるので移動は楽です. 加賀三湖のひとつ『柴山潟(しばやまがた)』の南西岸に展開する片山津温泉は明治期から開発された、加賀温泉郷の中では最も新しい湖畔温泉地. 総湯は柴山潟の湖岸に近い場所に建つ、ガラス張りが特徴的な建物です.






まずは建物正面となる南西側の外観の様子を. 施設名が取り付けられた奥に長いコンクリ壁(写真1・3枚目)、スロープの先に見えるガラスカーテンウォールの向こうには、建物内を歩く人の様子がハッキリと確認できます(写真2枚目). 手前は芝と緑の公園空間(写真4・5枚目)として整備され、奥には雄大な柴山潟の眺望(写真6枚目)が望める見事な自然のロケーション. 美術館と見間違えそうなアート要素満載の建築、これを知識なしで共同浴場だと見抜ける方は滅多にいないでしょう.
こちらは片山津温泉街の中心にあった旧総湯から場所を湖畔寄りに移し、2012年4月に新築オープンした片山津温泉の6代目総湯. 『総湯(そうゆ)』とは共同浴場のことで、近隣住民の集いの場としての役割を持っていたとされています. 設計は「丸亀市猪熊弦一郎現代美術館」や「豊田市美術館」等の設計者でもある、繊細かつ美しい現代建築を作風とする建築家・谷口吉生氏. 当初は『街湯(まちゆ)』という名称でしたが、2014年10月に現在の名前に変わりました.







別のスロープの先に柴山潟側へ通じる通路(写真1枚目)があるので、建物の真下をくぐって反対側へきました. 緑に覆われていた正面とは打って変わり、こちらは少し手を伸ばせば水面に届きそうな程に近づける階段広場(写真3枚目)が整備された湖岸空間です. ガラスファサードもこちら側からの方が見学しやすく、雄大な柴山潟の景色や空の風景がガラスに映り込んでいて、とても気持ちがいいです. この柔順に美しいガラス建築は、同じく谷口氏設計の「葛西臨海公園展望広場レストハウス」と非常に似た雰囲気を感じさせます. ここから北西に遊歩道が伸び、湖岸の情景を歩きながら楽しめるのもいい感じです.







外観も一通り見たので、建物へと進んでいきます. スロープからのアプローチ(写真1枚目)が美しすぎて、到底公共浴場に見えないな〜というのが率直な感想. 玄関のすぐ横に2階へ上がれそうな階段(写真2・3枚目)を見つけたので少し寄り道. スケスケなのが若干怖い階段を昇ると、そこは柴山潟を一望できる野外テラス(写真4枚目以降)です. 潟の向こうには白山連峰もうっすらと見えており、曇り天気だったのが悔やまれます. これでも前日は晴れ予報だったんですけどね.
テラスからだと葛西のレストハウスと同様のキュービックなガラスを感じられる部分もありますが、大きく違うのは一部のガラスファサードが独立してテラスにまで張り出している(写真7枚目)ところ. あえてガラスを突き出すことでハコ型としての閉鎖感を和らげ、時にガラスは内外の境に、ある時は空を透過させ、またある時は潟の情景を映し込むスクリーンのような印象を受けました.






それでは館内へ. 受付の方に趣旨を説明して、内観掲載のOKをいただいております. 1階は中央に受付と階段、両脇に男湯・女湯への入口があるだけで、外から見たよりも非常にコンパクトな内部です. ガラスの一方は柴山潟(写真3枚目)を、 もう一方は森や芝(写真4枚目)という対照的な自然の風景を見られるのがいいですね. 2階は『まちカフェ』というカフェなのですが、来たのが朝7時ごろ早かったため開店前(朝10時から)につき上がれず. 粘ってもよかったものの、昼には金沢入りしたく断念しました. 次はカフェ開店中に来たいです.
総湯には柴山潟を眺められる『潟の湯』と森を眺められる『森の湯』という2つの湯があり、日ごとに男湯・女湯の位置が変わるのが特徴. 入浴料440円(タオル等は別途)を支払って今回入ったのは『潟の湯』. 潟の眺望が見たかったので、個人的に当たりです. 温泉は塩化物泉、つまり塩辛い泉質. グリーンスレートの床や、潟を一望できる浴槽に入りながら、谷口デザインの温泉空間を満喫. 石川来訪の際には毎度来たいと思わせてくれる、素晴らしい温泉建築でございました.
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