




展示館は「古総湯」のある山代温泉街の中心から北東方面へ徒歩10分ほど. 両サイドに住宅街が立ち並ぶ2車線道路
(写真1枚目)の先へ進むと、奥に真っ黒な建物が見える展示館
(写真3枚目)に到着です. 道路側以外の3方に住宅がひしめき合ってるため、看板だけが頼りの徒歩移動でした. ちなみに展示館の少し東には周遊バスのバス停があるため、加賀温泉駅からのアクセスも比較的良好です.
こちらは鮮やかな色絵磁器で名高い『九谷焼(古九谷)』の窯跡を主に保存・展示する施設. 九谷焼に関しては、その発祥地・大聖寺にある
「石川県九谷焼美術館」にて解説しましたが、じつはこの山代温泉に窯跡が残っています. この部分に関しては窯跡にてご紹介したいと思いますが、その窯跡を覆う「窯跡覆屋」を「新総湯」と同じく内藤廣氏が設計しています. 「新総湯」よりも7年早い2002年の竣工で「ちひろ美術館・東京」等と同時期に手がけられた作品です.





通路の先にある木造建物の野外窓口
(写真1枚目)でチケットを買って入館. 空間としてなら館内掲載OKのお許しをいただきました(各施設内の写真はロゴ付き). こちらでは先に「窯跡覆屋」以外の展示館構成施設をサラッとご紹介.
窓口のある西側の建物は『旧九谷寿楽窯母屋兼工房(加賀市指定文化財)』という木造民家. かつて九谷焼窯元の社屋・経営者宅兼工房として明治期に移築されたといわれています. 内部では九谷焼の制作工程や作業道具
(写真2〜3枚目)を間近に見学できます. 展示館東側にある段々状の石壇に建つ「窯小屋」
(写真4枚目)では、現存最古の九谷焼窯(『山代九谷焼磁器焼成窯及び窯道具類(加賀市指定文化財)』)
(写真5枚目)を展示. 九谷焼製造の痕跡を示す貴重な遺構です.





そしてこちらが、九谷焼窯跡を保存する内藤廣氏設計の「窯跡覆屋」です. グレー調のスチール材で覆われた、まるでシェルターのような建築. 積雪量が多い地区ということで設けられた腰折れ屋根(マンサード)は、途中で途切れているのが気になるところ. 周囲に主張しすぎない色合いでドッシリと構えており、覆屋(シェルター)という機能をシンプルかつ実直に突き詰めている印象でした.
覆屋内に保存される国指定史跡『九谷磁器窯跡(別名、山代再興九谷窯跡)』は、1700年頃に途絶えた古九谷を再興させようと、中心人物であった豊田伝右衛門が築窯したとされる九谷焼(再興九谷)の登窯跡です. 1824年頃の築窯の際は『吉田屋窯』と称し、その後は『藩営九谷本窯』や『九谷(嶋田)寿楽窯』を名を変えながら昭和15年まで続いたそうです. 象設計の美術館と内藤氏の窯跡館、建築スポットで九谷焼をデザインから製作まで知れるのは良い体験でした.





いよいよ覆屋の中へ. 段々状に奥まで続く約20m角の窯跡
(写真1〜2枚目)を、スチールの立体トラスがグワッと覆います. 外観からはわかりにくかった屋根の途切れ部分はハイサイドライトに
(写真5枚目). 木とスチールが組み合わさった内藤氏の大スパン建築といえば
「JR高知駅舎」を思い起こしますが、ここでの木材は構造集成材ではなく内装だけのご様子. 外観のシンプルさからは些か意外な、構造のシャープさと力強さが間近に感じれるパワフルな建築でございました.
建築スポットとしては施設単体で小規模なスポットですが、九谷焼関連の展示も濃密で予定よりも長く見学していました. 内藤氏の建築作品群として「新総湯」と併せて訪れたいスポットです. 皆様もぜひご来訪くださいませ.
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