2017/10/13




町民文化館は前回ご紹介した「北國銀行武蔵ヶ辻支店」が建つむさし交差点から西へ伸びる国道159号(写真1枚目)を道なりに歩いて2〜3分ほどです. 建物のある一帯は『尾張町』という地域で、加賀藩初代藩主である前田利家公の出身地・尾張荒子(現在の名古屋市中川区荒子)の町人を召し寄せて住まわせたことが主な名の由来とされています. 一部に昔ながらの建物が並ぶこの通りには、昭和40年ごろまで北陸鉄道の市内線(路面電車)が走っていました.
国道の南側に建つ文化館は、上部に反りの見事な入母屋屋根がドンとのる和風の佇まい(写真2・3枚目)をした建物. 付近の町屋と比較しても規模がデカく目立ちます. 旧銀行として建てられたためか建物は塗籠の土蔵造り、腰壁には赤褐色の戸室石(とむろいし)を使用しており、蔵のような要塞感と城郭のような威厳性を合わせた意匠です. 明治期に建造された和風銀行の典型ともいえますが、屋根を含めて威厳性・格式性を全面に出しているものは珍しく感じます.





それでは館内へ. 受付の方より展示物・人が入らなければ内観掲載OKのお許しをいただきました. 当館は北陸銀行の前身機関のひとつ『金沢貯蓄銀行』の本店として1907年に完成. 既に今年(2017年)で築110年です. 北陸銀行所有後も昭和50年代まで支店として利用され、県に寄贈されたことで県立郷土資料館の分館へ. 現在は商店街組合が運営する資料館として活用されています. 県指定文化財でもある文化館の入館は無料. 一方で開館日は、原則土日祝に限られています.
写真からもわかるように、内部はガッツリ洋風. 手前にカウンター・奥に営業室が広がる典型的な銀行ですが、和の外観とのギャップが大きく、あの外観にこの内装かと呆気にとられました. 付柱や建具類を木彫りで、それ以外を白漆喰で仕上げ、随所に繊細かつ優美な装飾が施されているのが見事です. 客溜り部の天井では、木板を張る方向にまでこだわっています. 小屋組は西洋のキングポストトラスとして、あの重々しい瓦屋根を支えながら広い大空間を実現したようです.






建物を設計したとされている長岡平三(ながおか へいぞう)氏は工手学校(現在の工学院大学)出身の建築技師で、富山にある「砺波郷土資料館(旧中越銀行本店)」などを手がけています. ただ長岡氏が手がけた確証はなく、受付の方も『長岡さんが設計したらしい』という推論でお話されていました. ただネットでは設計長岡氏が通説になっているようです.
奥のホールに現れる木彫りアーチ(写真1枚目)も見事ですが、西洋の銀行建築にあるデザインの対称性・整頓性は薄く、豪華な装飾を密に詰めた感じです. これに関しては金沢市でも『古典の法則にこだわらず自由奔放』と評されています. 頭取室(写真3枚目)は天井の木彫り装飾(写真4枚目)が実に見事. 営業室の隅にある階段(写真5枚目)から地下金庫室を利用した小ギャラリー(写真6枚目)にいけたりと、旧銀行の要素を積極的に活用しているのが良かったです. ぜひ開館日に訪問して和洋のギャップを感じてほしい、ユニークな金沢の旧銀行建築スポットをご紹介しました.
- 関連記事
-
- 金沢市立玉川図書館
- 金沢文芸館
- 尾張町町民文化館
- 北國銀行武蔵ヶ辻支店
- 金沢駅東広場(もてなしドーム・鼓門)
コメント