石川四高記念文化交流館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

石川四高記念文化交流館

           
0277:四高記念文化交流館 メイン

0277 - 石川四高記念文化交流館(旧第四高等中学校本館)
竣工:1891年
設計:山口半六+久留正道
住所:石川県金沢市広坂2-2-5

皆様どうも. 金沢中心部特集も半分を折り返し、後半からは金沢の文化集積地区である金沢城・兼六園周辺の建築スポットをお送りしていきます. まず最初は「金沢21世紀美術館」が建つ広坂地区です. 江戸期を武家屋敷、大正末期からは「石川県庁(現:しいのき迎賓館)」がこちらに移され、金沢を代表する官庁街として発展してきました. その西地区(香林坊寄り)に建つ石川四高記念文化交流館は、重要文化財のレンガ建築を活用したレトロ建築スポットです.
0277:四高記念文化交流館 百万石通りより①

0277:四高記念文化交流館 百万石通りより②

0277:四高記念文化交流館 百万石通りより③

0277:四高記念文化交流館 正面外観

0277:四高記念文化交流館 正面ファサード①

0277:四高記念文化交流館 正面ファサード②

交流館へは北鉄バスの香林坊バス停から徒歩ですぐ. 百万石通りの北側に建つ赤レンガが目印の建物です. 縦に長いアーチ窓が整然と並ぶ建物は『旧第四高等中学校』という旧制学校の本館として1893年に建造されたもの. 『四高(しこう)』という略称のあるここは、日本の最高学府として創設された東京帝国大学へ進学するための予備学校として創設され、校名に番号がつくものは全国でも5つしかない特別な官立学校でした. いわば当時のエリート養成学校です.

本館の設計を手掛けたのは、当時文部省の技師として様々な学校建築を手掛けた山口半六(やまぐち はんろく)氏と久留正道(くる まさみち)氏です. 旧制高等中学校に関わるお二方の他の現存作としては「旧第五高等中学校本館(現:熊本大学五高記念館)」や「旧第三高等中学校寄宿舎(現:京都大学吉田寮現棟)」があります. 明治期の文部省営繕を牽引した方々が手がけた学校建築、実に立派です.
0277:四高記念文化交流館 西翼部①

0277:四高記念文化交流館 西翼部②

0277:四高記念文化交流館 裏側ファサード①

0277:四高記念文化交流館 裏側ファサード②

0277:四高記念文化交流館 裏側ファサード③

0277:四高記念文化交流館 裏側ファサード④

西翼部からグルッと回り込んで裏側を見ていきます. 本館は両翼付きの2階建て、レンガはフランス積みで組まれています. 明治期の学校というと擬洋風の木造建築をイメージしやすいですが、官立の高等機関ということもありドッシリと権威的な佇まいをしています. 2階窓のアーチ部には白色を混ぜ、存在感が強調されています. 当初本館裏手には四高の教室棟・学生寮などが大規模に建っていましたが、現在は「四高記念公園」という都市公園に整備されています.

北陸の学問の拠点となった四高からは内閣総理大臣となる林銑十郎氏・阿部信行氏、物理学者である中谷宇吉郎氏や哲学者の西田幾多郎氏、建築では金沢出身の谷口吉郎氏、逓信省の営繕建築家として名高い山田守氏・吉田鉄郎氏が四高を経て活躍しました. 戦後は新制の金沢大学理学部校舎として1964年まで使用され、その後は裁判所・資料館として活用. 初期の公立(官立)学校建築として貴重なものとされ、1969年に国の重要文化財に指定されました.
0277:四高記念文化交流館 正面入口①

0277:四高記念文化交流館 正面入口②

0277:四高記念文化交流館 裏側入口

0277:四高記念文化交流館 1階廊下①

0277:四高記念文化交流館 1階廊下②

0277:四高記念文化交流館 1階廊下③

0277:四高記念文化交流館 1階廊下④

さてそれでは入館します. 正面玄関は西洋的デザインが施されたキャノピー(写真2枚目)がありますが、裏側は切妻の瓦屋根が乗った和のデザイン(写真3枚目)です. 2008年にリニューアルオープンした当館は西側(西翼部)と東側(東翼部)で全く別の施設になっており、西翼部は旧四高の歴史を展示する「石川四高記念館」、東翼部は石川に所縁のある文学者の資料を展示する「石川近代文学館」となっています. 記念館は無料、文学館は有料です.

写真4枚目からは無料ゾーンである四高記念館の廊下を撮影したものです. 受付に尋ねますと廊下や階段といった共用部は掲載OKとのことでした. 日照の良い南側に教室をズラッと並べ、北側を片廊下で繋ぐ平面構成は戦前の学校建築の典型です. 高い天井や漆喰のアーチ(写真4枚目)、菱形状に配された石床(写真6枚目)などレトロな情緒が今なおも残っており、リニューアルでどう変化したのか気になったのですが、内部はオリジナルの要素が多く残っている印象でした.
0277:四高記念文化交流館 階段①

0277:四高記念文化交流館 階段②

0277:四高記念文化交流館 階段③

0277:四高記念文化交流館 2階廊下①

0277:四高記念文化交流館 2階廊下②

それでは階段を経て2階へ. およそ学校の階段とは思えない、気品ある手摺の木装飾(写真2・3枚目)が見事です. 2階の廊下は木床で、一部がカーペットを模して赤くなっていました. この階の教室部の多くは多目的利用室として貸出されており、当日はアートイベントが行われていました. レンガ造りによる壁の厚みが生む閉鎖感を、階高を高くして空間を広く、窓を縦に長く開放的にして解消させています.

四高記念館では外の物事に関与せず、平然として自らの立場を貫く『超然』を校風とした四高の学生生活や歴史を紹介. 近代文学館では石川の近代文学を牽引した『三文豪(徳田秋聲・泉鏡花・室生犀星)』を中心に金沢の文学を展示しています. 記念館には当時の四高の校舎模型(展示品につき写真なし)があり、現在の裏手の公園に関連施設が広域に建っていたのがよく解りました. 金沢城近くに残る赤レンガの旧学校建築は、戦前の金沢の町並みを今に残すレトロスポットです. 金沢を探訪した際は、ぜひ一度ご来訪下さい.


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