2017/10/24





博物館があるのは兼六園の南に広がる「本多の森公園」の園内です. ここは加賀藩の代表的な家老『加賀八家』の筆頭・本多家の武家屋敷群が軒を連ねた場所. こちらの加賀本多家は徳川四天王で名高い本多忠勝の家系(平八郎家)ではなく、家康の参謀であった本多正信の家系(弥八郎家)にあたり、有力大名に匹敵する石高五万石を有していました. 公園内には他に「石川県立美術館」や「藩老本多蔵品館」などの施設が建つ文化ゾーンとなっています.
博物館は公園内の南に建つレンガ造の建物. 奥手に長く伸びる2棟の建物が写真2枚目に見えますが、その左奥にも更に1棟建っています. 切妻屋根に覆われて奥までずーっと続く、デカい蔵のような赤レンガ建築. それもそのはず、この施設は元々旧陸軍の兵器庫として建造された倉庫です. 金沢に拠点を置いた『第9師団』の武器庫(兵器支廠)として、明治末期から大正初期にかけて建造された3棟の兵器庫(第5〜第7兵器庫)を博物館に活用するリノベーション近代建築です.






全体マップ(写真1枚目)を見ながら解説すると建物は西の2棟(第1・2棟)を「石川県立歴史博物館」に、東の1棟(第3棟)を「加賀本多博物館」として活用しており、中央に位置する第2棟が無料入館可能なスペースとなっています. 長辺約90mにも及ぶ各棟は窓を鉄扉で覆われ、堅牢なレンガ造武器庫の遺構を今に残します. 西側入口前には金沢城へ揚水した『辰巳用水』の石管を再現した造形(写真5枚目)、東側の裏手には現代的なガラス空間(写真6枚目)を見ることができます.
旧陸軍師団兵器庫として残る施設はここ含め4ヶ所ありますが、完全な形で現存するのはここ金沢と第11師団の善通寺のみ(博物館情報)とのこと. 戦後工芸大学に使用された後に「旧第四高等中学校校舎(現:石川四高記念文化交流館)」で開館した県立郷土館がこちらに移り、現在の歴史博物館として1986年に開館. 1990年には建物が重要文化財へ、翌年には保存再生事業として日本建築学会賞(業績)を受賞. 1998年には公共建築百選の一つに選出されています.







では館内へ. 閉館15分前での入館だったので、探訪は無料の「交流体験館(第2棟)」と外観でみたガラス空間「ほっとサロン」(写真7枚目)だけ. 総合案内より無料ゾーンの掲載OKを確認しています. 体験間の中心となる「いしかわウェルカムラウンジ」は金具で補強された木の構造体が支える空間で、一部の柱下にはレンガ造の基礎(写真2枚目)が保存・展示されています. スペース中央には広域模型(写真4枚目)が展示され、周辺の主要スポットが一目でわかるようになっています.
現在の博物館は『いしかわ赤レンガミュージアム』として2015年にリニューアルされ、内装の全面改修やサロンの増築を長村建築事務所が担当しています. 外観は忠実に復元されていますが構造は各棟バラバラで、第1棟が柱梁を全てRCでやり変えていれば、第3棟は耐震補強をして当時の木造を極力残しているそうです. ここらは有料スペースですので次回に持ち越しです. 日本で数少ない陸軍武器庫を活用するミュージアム. 現在における希少なレンガ遺産として残ることを願います.
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