





写真1枚目は
「金沢21世紀美術館」が角に建つ広坂交差点から南へしばらく歩いた先にある本多町交差点です. 近くには金沢周遊バスの本多町バス停もあるため、金沢駅からバスで楽にアクセスできます. 付近の案内地図に従って住宅街
(写真2枚目 右端の電柱に案内看板)を進んでいくと、垣根の奥に広がるコンクリートの現代建築が姿を見せます. グレーの色合いが周囲の緑に対して浮てるように感じるものの、建物自体は小振りで際立った違和感はありません.
「石川県立歴史博物館」が建つ本多の森公園の西隣に建てられたこの建築は、日本仏教の一つである『禅(ZEN)』の英文著作を執筆し、世界的に禅の文化を広く知らしめた仏教学者・鈴木大拙
(すずき だいせつ)氏の考えを伝承する文化施設として2011年にオープン. 設計は
「豊田市美術館」や
「加賀片山津温泉 総湯」等を手がけた谷口吉生氏. 最近のニュースによると、今後同市寺町にある父・谷口吉郎氏の生家跡に建築博物館をつくるようです(2019年完成予定).







細いルーバーが並ぶ「玄関棟」の左後ろに真っ白い建物が見えるので、そちらへ伸びる散策路
(写真1枚目)を歩いていきます. 見えてくるのはあたり一面に水盤が広がり、その右手にアルミパネルの庇が張り出すホワイトキューブの建物
(写真2枚目)が島のように浮かぶ「水鏡の庭」と称された水の空間. 裏手に広がる本多の森の緑が、金沢市街地と切り離されて凛とした雰囲気を創り出しています.
奥に桟橋のように突き出す部分
(写真4枚目)がありますが、こちらへは「中村記念美術館」へも通じる散策路から出入りできます
(写真5枚目). 水盤に反射する姿も見事なホワイトキュービックの建物は「思索空間棟」といい、来館者自身が思索するために設けられたスピリチュアルな空間. 森と水の静寂さが漂う中に時折ボコッと水の波紋
(写真7枚目)が生まれ、フラットだった水盤に面白い波形が現れます.






それでは館内へ. 入館は有料(写真ロゴ付き)ですが、奥の展示フロア以外の撮影・掲載はOKとのお許しをいただきました. 展示フロアへ通じる廊下
(写真1枚目)は、全体的にダークでピリッとした雰囲気のある空間. 廊下中央にある「玄関の庭」
(写真2枚目)から注ぐ光が、よりこの空間の陰影を引き立てています. 鈴木氏は書作を作品とする学者で、展示空間ではその書籍・書・写真が展示されています. 展示フロア奥に広がる「露地の庭」も素晴らしいです.
展示フロアを抜けると、先ほど散策路から見た「水鏡の庭」へと出ます. 床・屋根・壁が幾何学調にカクカクと折り曲がる現代的なデザインに、有機的で様々な形をした森の木々が奥に広がる
(写真3・4枚目)幻想的なビュー. 金沢市街地という外部・日常空間から切り離された静寂さは、鈴木氏が説いた禅の精神の体現です. 水盤奥に広がる壁の石垣
(写真6枚目)には、犬島産の錆石が使用されています.






それではこの施設のメインともいえる「思索空間棟」に入っていきます. ここら辺から少し小雨になってきまして、雨による水盤の波形の面白い重なり
(写真3枚目)を見ることができました. 棟内は1辺6.8mの正方形空間となっており、そこに畳敷きの腰掛け(1辺9m角)が整然と並びます
(写真5枚目). 天井には丸いトップライト
(写真6枚目)がありますが、当日は曇りということで日差しは弱め. 晴れるとパンテオンみたく光が落ちるのでしょうかね.
ここでカメラを置いて、腰掛けで座禅を組んで暫く瞑想. 水盤の奥に森の緑、周囲からは虫の音や鳥のさえずり、そしてシトシトと微かに聞こえる雨の音. タイトな旅程を忘れてしまいそうな程に心地の良い、いつまでも居座れる見事な禅堂. 仏教に対する知識はさっぱりですが「なるほど、これが鈴木氏の禅(ZEN)か!」と体感できた気がします. そんな空間を谷口氏が現代モダニズムで表現するとこうなるのかと、建築としての美しさにも脱帽してしまう素晴らしき探訪でした.
さてブログ開設2周年&金沢中心部特集ラストのご紹介となった鈴木大拙館、いかがでしたでしょうか. 『ARCHI'RECORDS』は次の3年目へ向けて様々な建築スポットを追い続けていきたいと思います. 今後ともよろしくお願い致します.
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