桜井寺 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

桜井寺

           
0287:櫻井寺 メイン

0287 - 桜井寺
竣工:1968年
設計:村野藤吾
住所:奈良県五條市須恵1-3-26

みなさまご無沙汰しています. 本業の仕事が忙しく、あまり体調も安定せず、気がつけば年末です. 都道府県建築マップや鉄道路線図の制作はなんとか続けていましたが、建築探訪は最近までさっぱりでした. しかしながら、それではあんまりと思い、またリハビリの感覚で記事を書いていきたいと思います.

今回訪れたのは奈良県五條市にある桜井寺です. 櫻井寺ともいいます. 設計は村野藤吾氏で、村野氏が手がけた奈良の建築には他にも「近鉄橿原神宮前駅舎」や「旧佐伯邸」など奈良盆地に幾つかありますが、ここはそこからやや離れた場所にある村野建築ということで、兼ねてからご拝見したいと思っていました. 折角なので五條の町並みも合わせてご紹介します.
0287:櫻井寺 五条駅

0287:櫻井寺 五條新町①

0287:櫻井寺 五條新町②

0287:櫻井寺 五條新町③

桜井寺はJR五条駅(写真1枚目)から徒歩で向かいます. 大阪からすると五條は金剛山地を挟んで反対側にあり、鉄道では山を避けながらJR和歌山線で大回り必要があるため、隣県でも移動にやや時間のかかる場所です. 五條市は、同市と吉野郡の各自治体から構成される南和地域の中心都市で、今年11月時点での推計人口は2万6千人ほど. 2005年に西吉野村と大塔村を編入したため、奈良県最南端の十津川村と接するほど南北に長い市域を有します.

五條にて特筆すべきは『五條新町』(写真2・3枚目)です. 中世の末に門前町として形成された『五條』と、江戸初期に松倉重政(まつくら しげまさ)を城主とした五条二見城の城下町である『新町』の2地域からなり、江戸期から戦前までの建物が和歌山街道沿いに多く並びます. 2010年に重要伝統的建造物群保存地区(重伝建)に指定されました. 建築年代の判る民家としては日本最古である「栗山家住宅」や、市内最古の旅館である「山田旅館」(写真4枚目)があります.
0287:櫻井寺 国道から

0287:櫻井寺 山門①

0287:櫻井寺 山門②

0287:櫻井寺 山門③

0287:櫻井寺 天誅組本陣跡

桜井寺はJR五条駅から五條新町のエリアに向かう途中、国道24号線の沿道にあります. 階段の先には山門. 正面(写真2枚目)からだと見上げる視点でわかりにくいですが、門を通って横からみると八の字のように大きく開いた緑青の屋根(写真3枚目)が特徴です. 和風ながらどこかモダンな雰囲気の佇まいを感じます.

当寺は天暦年間に櫻井康成によって開かれたと伝わる浄土宗の寺院. 山号は潤生山. 国道から見える神社の東には『天誅組本陣跡』(写真5枚目)と書かれた石碑があります. 天誅組とは幕末に旗揚げした尊皇攘夷派浪士の組織で、1863年8月に五條代官所を焼き討ち、この桜井寺を本陣とし、門前に『五條御政府』の表札を掲げました. この『天誅組の変』により、五條は明治維新発祥の地とも呼ばれます. 庭園は森蘊(もり おさむ)氏の作庭としても知られています.
0287:櫻井寺 本堂①

0287:櫻井寺 本堂②

0287:櫻井寺 本堂③

0287:櫻井寺 本堂④

0287:櫻井寺 本堂⑤

山門をくぐって右手に、桜井寺の本堂が現れます. 美しく反りながら手前に大きく伸びる大屋根の存在感. 横からみると(写真2枚目)、大屋根の反り・張り出しの具合がよくわかります. 緑青の屋根(写真3枚目)は恐らく銅板葺きです. というのも、村野氏はこの3年前に「カトリック宝塚教会」を手掛けていて、教会のしなやかなカーブを描く銅板葺きの屋根と、緑青の色合いが似ていると思ったためです.

堂の開口の手前に設けられたルーバー(写真4枚目)も一味違い、薄いピンクの色合いをしています. コンクリートの寺院にこの色は斬新と思いましたが、遠目だと乳白色のような色合いになり、コンクリートの重厚感を和らげるアクセントになっていると思いました. ルーバーをよく見ると、部材の断面(写真5枚目)は菱形で、細部にもしっかり凝っていると思いました.
0287:櫻井寺 本堂⑥

0287:櫻井寺 本堂⑦

0287:櫻井寺 本堂⑧

0287:櫻井寺 本堂⑨

0287:櫻井寺 本堂⑩

引き続き本堂を. 時刻は15時ということで、淡い西日に照らされます. 目を落とせば、コンクリートの落縁の目地と、洗練されたデザインの高欄(写真2枚目)が. 大屋根の裏には照明(写真3枚目)があり、桜の形にくり抜かれているのが面白いです. ルーバーと落縁は本堂の両側面まで続いています. 裏手は関係者のスペースで立ち入りはできませんが、その手前に村野氏がデザインしたのではと思われる、魅力的な照明(写真5枚目)がありました.

実は境内に入った際に掃除をしている方がいらっしゃって、その方に撮影掲載の確認をさせていただきました. 加えて、村野氏に係るお話をお伺いしました. 要約ですが『寺の檀家に村野氏の知り合いがいた』、『コンクリートのアーチがなかなかできなかったと聞いた』、『桜井寺本堂はもともと国道24号線の建設ルート上で、そこから移った』ということでした. あと『村野氏のお寺の建築はここが初めて』ともおっしゃっていて、村野建築は教会は多いけど、寺院は聞かないなと、この時改めて思いました. この場を借りて、改めて御礼申し上げます.
0287:櫻井寺 鐘楼①

0287:櫻井寺 鐘楼②

0287:櫻井寺 鐘楼③

0287:櫻井寺 付属建築

最後は山門・本堂以外の境内の建物です、境内の南西には鐘楼(写真1〜3枚目)があります、山門・本堂と同様のデザインの屋根を細い丸柱で支え、梵鐘が吊り下がります. 規模が小さくシンプルだからこそ、屋根や梵鐘という重いイメージのものを、丸柱が軽快に支える雰囲気はとてもよく伝わってきます. 本堂のすぐ西には信徒会館(写真4枚目)がありましたが、塀がありほぼ屋根しか拝見できませんでした.

本堂の中は締切ということで、ガラス越しからの見学に. コンクリートの外観とは打って変わって、堂内は温かみのある木の空間でした. ご興味のある方は、現地で実際に見学することをお勧めします. ということで、桜井寺(櫻井寺)の紹介は以上となります. 村野氏のコンクリート寺院建築がある奈良県五條市は、五條新町の町並み散策とセットで旅行すると楽しいです. それではまた.


※写真掲載(私的利用)について、桜井寺に確認済です.

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