仁風閣 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

仁風閣

           
0288:仁風角 メイン

0288 - 仁風閣
竣工:1907年
設計:片山東熊
住所:鳥取県鳥取市東町2-121
特記:2023年12月より5年間休館

皆様、新年明けましておめでとうございます. そして、2024年1月1日に発生しました能登半島地震にて被災された皆様におかれましては、心よりお見舞い申し上げます. 私も少しばかりながら、ネット基金やふるさと納税を通して支援をさせていただきました. 余震も続く中で大変な毎日を過ごされているかと思います、一日も早くこの事態が治まることを願っています.

今回は鳥取県鳥取市を代表する近代洋風建築である仁風閣(じんぷうかく)をご紹介します. こちらの建築は2023年12月29日から保存・修理のため約5年間休館となります. 今回は、その休館前企画として開催されました『御座所特別見学ウィーク』の開催期間中に探訪した様子を、休館前の記録を兼ねて探訪記事としました.
0288:仁風角 鳥取駅

0288:仁風角 バス

0288:仁風角 バス停から

0288:仁風角 久松公園

0288:仁風角 正門

私にとっては人生初の鳥取県訪問になります. 大阪から高速バスで3時間半. 関西は快晴でしたが、智頭あたりから雪のある風景へと変わりました. JR鳥取駅から仁風閣へは土日祝限定で鳥取砂丘などへ向かう『ループ麒麟獅子バス』(写真2枚目)がありますが、当初乗る便が満員で、運転士から『100円バス(緑ルート)』を勧められて、そちらに乗りました.

バスに10分ほど乗って下車すると、すぐ北東に白亜の洋風建築(写真3枚目)が見えました. こちらが仁風閣です. 奥にある山は鳥取市のシンボル・久松山(きゅうしょうざん)で、その中腹には『鳥取城』の遺構が広がっています. 16世紀半ばに築城された鳥取城は、尼子氏や毛利氏による争奪戦の舞台に. 関ヶ原の戦いの後は、東軍に属していた池田長吉(いけだ ながよし)が鳥取藩に移封し、以後池田家は長きに渡り鳥取の領主を務めました.
0288:仁風角 正面外観①

0288:仁風角 正面外観②

0288:仁風角 正面外観③

0288:仁風角 正面外観④

0288:仁風角 尖塔

この休館前企画では入館料無料. 早速正門を入って正面外観を見ていきます. 中央上部に設けられた半円形のペディメントが特徴で、中に六芒星の装飾があります. その中に池田家の家紋『揚羽蝶』を模った細かな装飾(写真4枚目)があります. 瓦葺き寄棟屋根からは煉瓦造の煙突や円形の換気窓. 建物自体は左右対称ではなく、正面から見て右側に尖塔(写真5枚目)があります.

仁風閣は旧鳥取藩主だった池田家の16代目・池田仲博(いけだ なかひろ)侯爵の別邸として計画されましたが、最終的には皇太子時代の大正天皇の鳥取行幸時の宿舎(御座所)として建築. 設計は国宝「赤坂離宮(旧東宮御所)」や「奈良国立博物館本館」を手掛けた片山東熊氏で、工事監督は片山氏の後輩であった橋本平蔵氏が担当し、8ヶ月という短期間の工期で完成させたといわれています.
0288:仁風角 側面

0288:仁風角 背面外観①

0288:仁風角 背面外観②

0288:仁風角 背面外観③

0288:仁風角 背面外観④

裏手に周って、こちらは背面の外観です. 建物のすぐ東には市の指定名勝『宝隆院庭園』があり、庭園を歩きながら雪化粧した仁風閣を見ることができました. 特徴的なのは2階の全面にガラスが貼られたテラス(バルコニー)です. テラス下の1階部分には入れませんでしたが、階段(写真4枚目)や照明(写真5枚目)に装飾が見られます. 仁風閣は鳥取県内で初めて電灯が灯った建物といわれています.

仁風閣の案内では様式について『フレンチルネッサンス様式を基調』と説明されています. 片山氏はフランスの宮廷建築を基盤として、ルーブル美術館やヴェルサイユ宮殿の様式を研究しました. その成果を経て建てられた赤坂離宮は、最高傑作と讃えられます. 赤坂離宮は当館の着工よりも7年早く着工しており、当館は片山氏が宮廷建築家としての最盛期に設計した作品といっても過言ではありません.
0288:仁風角 玄関床

0288:仁風角 1階①

0288:仁風角 1階②

0288:仁風角 1階③

0288:仁風角 1階④

さて館内へ入っていきます. 玄関の床目地が六角形(写真1枚目)で面白いです. 1階は道具置場や事務室として使われていた部屋に、池田家の歴史や仁風閣の成り立ちにまつわる資料が展示されていました. この階で一番目を引くのが、テラス側中央にある随員控所(写真3枚目)で、展示を省いた広いスペースになっています. 3灯のシャンデリアや鏡台、暖炉の装飾(写真4・5枚目)に至るまで素晴らしいです.

仁風閣は皇太子殿下行幸後の2年後に、池田家から鳥取市に管理を委託. 1944年からは市が公会堂として利用していました. 1943年の鳥取大震災では煙突が落ちたものの、被災した県庁の業務をこちらで執り行ったそうです. 戦後は『鳥取県立科学館』として1972年まで運用されましたが、その後は鳥取県から鳥取市に譲与. 1973年6月に国の重要文化財に指定され復元工事を実施. 3年後に一般公開を始めるという形で今日に至ります.
0288:仁風角 螺旋階段①

0288:仁風角 螺旋階段②

0288:仁風角 螺旋階段③

0288:仁風角 螺旋階段④

0288:仁風角 螺旋階段⑤

2階に行く前に見ておきたかったものが、建物南側にある螺旋階段です. 外観の際に見た尖塔は、この階段室でした. ケヤキを削り出す方法で八角形の壁面に沿うように作られた、支柱なしの美しい螺旋階段. 裏面(写真3枚目)も、しなやかなカーブを描きます. この階段は、皇太子殿下の滞在中は使用人の階段として使われました. 天井から吊り下げられた、チューリップ意匠の照明(写真5枚目)も素敵です.
0288:仁風角 2階①

0288:仁風角 2階②

0288:仁風角 2階③

0288:仁風角 2階④

そして2階へ. 仁風閣という名称は随行した東郷平八郎海軍大将(当時)によって命名され、その直筆の書が2階ロビー(写真1枚目の奥)に掲げられています. 御食堂と称された部屋からは、庭園から見えたガラス張りのテラス(バルコニー)(写真3・4枚目)に出ることができます. 天井・床等ほぼ全てが白. 周囲にはあまり高い建物がないため、鳥取市街を広く眺めることができました.
0288:仁風角 損傷部分①

0288:仁風角 損傷部分②

0288:仁風角 損傷部分③

ここで今後の保存修理に関して. 1974年から2年間の復元工事を行い、既に半世紀が経過しています. そのため外壁の至る部分が剥がれ(写真1枚目)、内壁のヒビ(写真2枚目)や天井漆喰の剥離跡(写真3枚目奥)がいくつかありました. これから5年間でどのような工程で保存修理が進むのか、今後の鳥取の文化財保護の動向に注目したいところですし、詳細がわかればこちらに追記したいと思います.
0288:仁風角 御座所①

0288:仁風角 御座所③

0288:仁風角 御座所⑦

0288:仁風角 御座所④

0288:仁風角 御座所⑤

そして『御座所特別見学ウィーク』にて特別公開された御座所です. この部屋は1907年の竣工以来一般公開されるのは初めてで、修理工事後も公開する予定がないとのことです. この部屋だけシャンデリア(写真2枚目)は5灯で、先ほどの3灯と比較すると中心の球体が2つあります. 天皇家の家紋である菊の装飾がカーテンボックス(写真3枚目)、椅子(写真4枚目)、鏡台の上部(写真5枚目)に施されています. 一部復元品もありますが、当時の絢爛な設えを今に残していました.
0288:仁風角 御座所②

0288:仁風角 御座所⑥

0288:仁風角 御寝室①

0288:仁風角 御寝室②

0288:仁風角 御寝室③

写真2枚目のマントルピースはイタリア産の黒大理石で、残存品から復元したもの. 中にある緑のタイルには右に王子、左に王女の像が描かれています. 写真3枚目からは御寝室です. こちらは普段は中廊下から観覧する形ですが、今回は御座所側からの見学になりました. 畳敷に白いマントルピースの暖炉というのは、なかなかない気がします. 照明(写真4枚目)は八角形のモダンなデザインですが、これは一般公開に際して別に持ってきた照明とのことです.

以上が仁風閣の長期休館前特別見学の探訪録となります. 再度申し上げますが、こちらは2023年12月から5年間休館します. 休館後は2024年3月ごろに仮説のガイダンス施設を設置し、仁風閣の修理事業の概要や鳥取城跡のガイダンスを行う予定(鳥取市HPリンク)です. 損傷の激しさはかなり気になりましたので、工事後の装い新たな仁風閣が拝見できますことを、楽しみにしています. それでは今回はここまでです.

● 参考建築資料:
『片山東熊とその時代』大手前大学社会文化学部論集, p75-95, 2003


※写真掲載(私的利用)については、館内スタッフに確認済です.

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