2015/12/13




折角来たので鳳凰堂もパシャリ. 今では世界遺産としても名高い平等院は、藤原道長氏の別荘だった『宇治殿』を、その息子である頼道が寺院に改めたのが始まりです. 10円玉の裏にも描かれることでも有名ですが、実は1万円札裏に描かれた鳳凰も、堂の屋根に乗っている鳳凰像がモチーフになっています. 鳳翔館は平等院開創950年を記念に建設され、全国で初めて宗教法人が設立した総合登録博物館です. 配置としては鳳凰堂を正面から見た場合の左側裏手にあります.
鳳凰堂と書かれたサインに従って進むと、コンクリート壁に仕切られた入口があります. そうです、こちらも展示室が地下に埋め込まれたタイプの美術館で、肝心の外観は丘の上にあります. しかし入口は地上なのに展示室は地下というのは何とも奇妙な感じがします. これは元々の丘を削ったのか、はたまた盛土なのかわかりませんが、どうやら風致地区の外側にある高層マンションが、鳳凰堂の裏に見えないようにするという景観的な対処らしいです.


館内は撮影禁止ですが、入口を入ってすぐのなが〜い廊下から「梵鐘(ぼんしょう)の間」を見られる場所は個人的に好きです. 十字格子の奥に鎮座する梵鐘の手前から、トップライトで照らされた廊下が非常にイイ色合いを出していました. いい忘れていましたが、この鳳翔館は平等院の入院料金で入れるため、特別な追加料金はかかりません. 入口と出口はありますが、平等院内にいるのであれば展示室を何周しても実質OKです.
展示室を見終わって丘の上のフロアに出てきました. 階段を上った先はミュージアムショップですが、鳳凰堂のある寺院施設らしからぬモダニズム館満載の建物ですね. 階段部分には外の木の陰が美しく投影された和紙のスクリーン、床は御影石をシェットバーナーで焼き付けて美しい黒色にしたものを並べています. よく見るとショップ全体もリブガラスで仕切って奥の様子が丸見えなほどに視線がクリアでした.




遅くなりましたが、設計したのは建築家 栗生明(くりゅう あきら)氏です. 早稲田出身の建築家で、同じく戦後モダニズム建築を牽引し「幕張メッセ」などの建築を手掛けた有名建築家 槙文彦氏の事務所に所属していたことから、同氏のモダニズム思想を強く受け継いだ作風として知られます. この鳳翔館は、2年に一人しか選出されない日本芸術院賞を受賞するきっかけとなった建物であり、同氏の代表作として高く評価されています.
ガラスの壁、コンクリートの壁、そして庇を構成する薄い鉄板と近代的素材をメインの素材としながらも、それが平等院の景観を壊しているようには一切見えないのが不思議なところです. 地上にでる階数を極力減らし、長方形の庇や鉄骨リブ梁で水平力を強調しているあたりは、昔の和風建築に似た構成だなと感じることもあります. しかし鳳翔館西側にある『平等院南門』と並べてみると、モダニズムと純和風との差異が際立って見えるのも面白いと感じます.



また、丘の上のフロアの東側には『苔庭』が配置され、その庭にくつろげるスペースがあり、観光客の人々が気持ち良さそうに談笑していました. 緑に囲まれながらのこのロケーションは最高です. なかにはあまりに気持ちよすぎて寝てしまう人も… このようなアクティビティが生まれ、景観に配慮し、なおかつ洗練されたモダニズム建築だからこそ、芸術院賞を受賞できたんだなと思うと非常に納得できるなと感じました.
さてさていかがだったでしょうか. 平等院にお越しの際は、ぜひともこの鳳翔館に立ち寄って、苔庭でくつろいでいくことを強くお薦めします. それでは今回はここまで〜
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