

ホームから降りるといきなり目につくのは、RCで造成された半円のヴォールト状の入口です. 平等院のイメージのある宇治なので、和風のイメージのある駅舎を想像していたのですが、何とも『円』が強調された近代デザインな駅舎にビックリさせられます. 改札からよーく奥を見てみると、この半円が向こうまで続いています.
ここで設計者のご紹介ですが、設計を手掛けたのは京都生まれの建築家・プロダクトデザイナーである若林広幸
(わかばやし ひろゆき)氏です. 若林氏の代表作として挙げられるのは、関西在住ならご存知であろう南海電気鉄道が誇る空港特急『ラピート』の設計者として知られています. あのブルーの塗装に「鉄人28号」と形容された無骨ながらも造形力の溢れるシンボリックなデザインは、「京都西利本店」や「ヒューマックスパビリオン渋谷」等の様々な建築作品でも見ることのできる、ポストモダン志向の建築家です.



改札を出て更に内側へ. 「これは神殿か!?」と疑いたくなるような半円の強調っぷりが半端じゃありません. 上部分には東西方向に伸びるヴォールトが掛けられ、天井面にはブロックガラスがはめ込まれていました. 半円外側の凹み線は造成時にわざわざ付けたのでしょうか、ただの半円には飽き足らずエッジまで強調させているのはこだわりなのか、謎です.
当時の資料では、JRの線路によって分断される南北の景色の『二面性』を表現したと記載されています. 即ち、鳳凰堂などの風光明媚な観光地である北側、工場や新興住宅地の拡がる南側という二面性ということですが、私にはよく解りませんでした… 駅ビルは15mもの高さになるため、ビルに大屋根をドーンと構えるのではなく、小さいユニットに分節してギザギザ状にすることで、南側の風致地区の景観に配慮しているそうです.
でもそれって水廻り大丈夫なんでしょうか…
こちらは構内を更に南へ進んで、宇治橋の下を通って辿り着く駅ビルです. こちらのビルは1995年当時よりも後に竣工した建物のようです. 先程と比較するとシンメトリーな印象のあるこのビルは、一件若林氏の作品ではないのではと思っていましたが、側面の壁には円形の窓が! ここにも『円』なぜそこまでこだわるのか、宇治と円には若林氏にしか感じ取れない関連性があるのか、謎は深まるばかりです.
というわけで今回の紹介はここまでです. 実際この駅舎はグッドデザイン賞や近畿の駅百選など様々な賞を受賞していますが、地元の人はどう考えているのかが気になります. 宇治に来た際は、謎要素満載の半円空間を一度体験してみてはいかがでしょうか. それでは今回はここまで〜
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