2015/12/24




美術館へはJR横須賀駅 もしくは 京浜馬堀海岸駅から路線バスに乗車し「観音崎京急ホテル横須賀美術館前」バス停で降りてすぐの場所にあります. 左手に美しい浦賀水道のオーシャンビューを望みながら歩いていると、右手に広〜い芝生のスペースと、奥手にガラス張りの建物が見えてくれば横須賀美術館に到着です.
日差しに照らされた美しいライトグリーンのガラスキューブの中には、所々に丸穴の開いた繭(まゆ)のようなものが見えますが、こちらの正体は後ほど. この美術館は横須賀市制100周年を記念して2007年に開館しました. 本館に加えて、横須賀にアトリエを構えながら『週間新潮』の表紙絵を26年間書き続けた谷内六郎(たにうち ろくろう)氏の絵を展示する『谷内六郎館』も併設されています.
谷戸(やと)という丘陵地が浸食されてできた地形にあるため一方は海、それ以外の三方は山というメリハリのある場所となっており、美術館正面からは子供が遊ぶ芝生スペース、数々の船が通る浦賀水道、その奥にはコンビナートの佇む房総半島の見える絶景が楽しめるロケーションとなっています.





それでは館内へ入りましょう. 撮影は指定されたエリアでの撮影はOKでしたので、来観客・スタッフに配慮しながらの撮影をお奨めします. ほぼ全面真っ白の空間の壁・天井には至る所に円型の穴がポコポコと開かれた可愛らしい空間が広がり、穴の一部は外の景色を切り取った絵画のようです. エントランスから入口を撮ると、円型にくり抜かれた先にある浦賀水道、ブリッジのガラス手摺に反射する様子がいかにも神秘的でした(トップ写真参照).
では美術館内部の構成はどうなっているのかというと、まず入口を入るとその先はブリッジ、そして下を覗き込むと軽く6mは落ち込んだ廊下型の展示室があります. 撮影は禁止されていますが、この美術館も展示室を地下に埋め込んだタイプの美術館で、普通に館内を歩いていてても展示室が丸見えの場所が所々にある『展示室が開かれた美術館』という、収益的に大丈夫なのか心配になる美術館なわけです. 私もはじめ見たときはビックリしました…
こちらの設計を手掛けたのは中国北京出身(国籍は日本)の建築家 山本理顕(やまもと りけん)氏です. 東京大学原広司氏の研究生として、アフリカを始めとした世界の集落調査に同行した経験から、住宅・コミュニティとは何かという命題に挑む建築家です. ロ型の中央に住民専用の中庭を配置した「熊本県営保田窪第一団地」や、ガラスによってオープンなコモンスペースのある「公立はこだて未来大学」など数々の名建築の設計を手掛けています.


館内からエレベーターで屋上へ向かう前に一つだけ、本館の入口やエレベーターの途中にはこのようなガラスと繭の狭間の部分を見ることができます. じつはこの繭の正体は現場溶接された鉄板で、それをガラスで覆った2層膜(ダブルスキン)の構造になっています. 何故こうなったかというと、海の塩害によって鉄板が錆びることを防ぐため、外皮にガラスウォールを取り付けたということでした. 夜は一部がライトアップされるみたいです.





そして屋上広場へやってきました. ライトグリーンの色合いを帯びたガラスの上に、有機的平面を模した鉄製の展望広場がそこにはありました. 屋上広場はそのまま山間の道と接続しており、そのまま観音崎公園の中央ゾーンにまで歩くことができるようになっています. このゾーン自体は無料開放なので、散歩に着たママさん達がデザイナーチェアに腰掛けながら談笑している風景も見られました.
屋上のペントハウスには望遠鏡や『恋人の聖地』と刻まれたレリーフがあったりと、どうやらデートスポットとしても人気のようです. 夕暮れ時ということもあり、太陽がいい感じに美術館を照らしている写真を撮っていたそのとき、何やら海でひときわデカい船が横断しています. 鈍色に輝くそれは横須賀軍港から出発した自衛隊の艦艇(DDH-183「いずも」)でした. スタッフに聞くとこの水道から往来する艦艇が希に見られるらしく、広場の子供達は大はしゃぎでした.



そして帰り際、玄関を出ると子供達の楽しい声がしたので行ってみると、そこは『ワークショップ室』でクリスマス用のプレゼントボックスをつくるWSが行われていました. どうやら広場に設置されているユニットに、子供達が作成したボックスを設置すると光る仕組みのようで、設置したのか楽しくはしゃぐ親子連れで賑わっていました.
山本氏は基本設計の段階から「市民の自由参加があるといいですね」としきりに言っていたらしく、このワークショップの風景も山本氏が望んだ『市民参加のできる美術館』の体現だと思うと、「できてよかったですね」と言いたくなるような賑やかな広場となっていることに感動してました. 残念ながらボックスの点灯時間までは残れませんでした、残念…
さてさて今回は眺めのご紹介となりましたがいかがだったでしょうか. 私が訪問したのは夕暮れでしたが、この時期ならば夜の美術館も奇麗だということですので、日の入りを狙ってロマンチックなオーシャンビューに入り浸ってみるのもいいかもしれませんね. それでは今回はここまで〜
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