


市電が通らないため、遠方からの方はJRもしくはバスで行くのが無難です. JRの場合は新幹線の跨線橋が駅との間にあるため、少し長い連絡通路を歩くことになります. そして連絡通路などから撮った外観が上の写真です. 国道54号線の中州には、半分埋まった白いリコーダーのようなユーモアな形態をした新白島駅舎がみえます. 実際に見ると「あっ、これは楽しそうだな」というワクワク感のある気持ちにさせてくれます.
新建築に掲載されている連絡通路は当時工事中でしたが、改札付近は完成していました. 屋根天井は明るみのある杉貼り仕上げ、屋根は屋上緑化となっており、屋根を支える柱は最低数かつランダムに配置されていました. 一本でも折れると崩壊しそうなギリギリ感がありますね. 屋根の構造は鉄骨ですが、こういう仕上げの裏が見れるのは工事中ならではだと思います.




そして改札口にまでやってきました. 筒型シェルの表面には所々に円窓が設けられ、そのまま採光としての役割を担っています. 出入口はJRへの北出口と駅の南側へ向かう東出入口があり、東出入口は丸形にくり抜かれた穴がそのまま門
(ゲート)となっていました. ですがチューブと東出口の門の境界は少し黒ずんでいます. 空気中のホコリが溜まって、そこに雨が流れたため黒くなったと推測しますが、ちゃんとメンテナンスして白さを維持してほしいですね〜
ここらで設計者の説明を. このプロポーザルを勝ち抜き、駅舎の設計を手掛けたのはシーラカンスアンドアソシエイツという4人組の建築家集団です. お魚のような名前ですが、その名前に劣らないユーモラスな学校建築を数々手掛け「千葉市立打瀬小学校」や「宮城県白桜高等学校」などで建築学会賞・作品選奨などの受賞歴のある実力集団です.
元々は『シーラカンス』という6人組で活動してましたが、1998年に『シーラカンスK&H』と当ユニットに分離・改組、更に内部でも東京事務所(CAt)と名古屋事務所(CAn)に分けられています. 今回担当したのは横浜国立大学教授でもある小嶋一浩
(こじま かずひろ)氏と法政大学准教授でもある赤松佳珠子
(あかまつ かずこ)氏の2人組ユニットである東京事務所(CAt)です. 近年の注目作として「宇土市立宇土小学校」があります.




それでは内部へと入っていきましょう. エスカレーターを降りていますが、この駅は厳密には地下駅ではありません. この駅は地下を刮削して設置した『半地下駅』というもので、北側はすぐに地上に出る路線となっています. 小島氏と赤松氏は駅から南側の広島市街と、北側の郊外ニュータウンを都市的スケールで捉え
『都市から郊外への移行』を象徴するものとして、南から北に向かって筒の断面が大きくなるこの外観フォルムにしたと述べています. ちなみに駅の南端には排煙機械室へ続く扉と階段がありましたが、当然入れませんでした.
この駅舎で革新的なのは
『土木(鉄道)と建築の融合リノベーション』という点です. 線路の管理会社は、後々この駅ができることを見越して、路線を駅が設置させやすいようにしていました. しかしいざ駅を建設する際に課題となったのは『既存の地下コンクリートに穴(駅のホームドア)を開けること』でした. それはつまり土圧に耐えられる構造に穴をあけるというものであり、それを上手く更新(リノベーション)しなければならないということでした. どのように対処したのかは省きますが、これを路線の運行を妨げることなくやってのけたのですから凄い土木技術です.
そしてその土木作業にシェル構造の建築を導入して竣工したこの駅舎. 今までは新築で考慮することの多かった駅舎建築ですが、外観を含めたリノベーションというのはあまり例のない珍しいケースです. ホームには細いワイヤーで吊り下げられた照明がありますが、晴れた日は必要がないほどの自然採光ができるそうで、当日曇りなのが悔やまれます. そういえばこんな建築どこかにあったな〜と思っていると…ありました!
「0010:金沢海みらい図書館」とかまさにこの駅舎バージョン、加えて設計は『シーラカンスK&H』です. 改組しても外観スタンスはお互い様みたいです、だがそこがいい!
というわけで今回は今月号の新建築でまさにホットな広島の駅舎建築をご紹介しました. 土木が優位になりやすい駅舎建築ですが、このようなやり方でコラボレートするのも面白いなと感心させられます. 広島の中心部からもそれほど遠くはないので、気になった人はちょっくらよってみてはいかがでしょうか. というわけで今回はここまで〜
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