長崎港ターミナルビル - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

長崎港ターミナルビル

           
0045:長崎港ターミナルビル メイン

0045 - 長崎港ターミナルビル
竣工:1995年
設計:高松伸
住所:長崎県長崎市元船町17

皆様どうも. 今回は長崎県の中心港である長崎港から、五島列島などの離島も結ぶ長崎港のターミナル建築 長崎港ターミナルビルをご紹介していきます.

長崎港は歴史を学んだ人なら誰でも知る『出島』のオランダ人貿易を起源とした、九州屈指の歴史のある貿易港です. 内湾型の形状と、周辺を山々に囲まれたその風景は『坂の街 長崎』として全国で有名ですが、戦後直後の港湾部は倉庫ばかりで、市民の憩いの場がない状況でした.

そこで長崎県は、港湾開発を盛り込んだ『ナガサキ・アーバン・ルネッサンス2001構想』を策定、公園の設置・商業施設の誘致を経て、現在の長崎港へと再開発を行いました. このターミナルも同様の構想で、1995年に開業しました. 愛称は『Big Bitt(ビッグビット)』です.
0045:長崎港ターミナルビル ロータリー広場から

0045:長崎港ターミナルビル メインエントランス

0045:長崎港ターミナルビル 東側外観

0045:長崎港ターミナルビル 南側外観

0045:長崎港ターミナルビル 西側外観

ターミナルの最寄は長崎市電の大波止電停から港に歩いて3分程度です. 電停近くにはカステラで有名な『文明堂』の本店もあります. ロータリーから本館を見た時のインパクトは凄いものでした. まず入口部分には真剣で斜め切りしたような筒状のボリューム、北側にある事務棟は工場のギザギザ屋根、港側に回り込めば楕円断面の長いシリンダーが横に寝かされ、2階の一部は宇宙船のように窪んでいるという非常に造形性に富んだターミナルでした.

設計を手掛けたのは京都大学名誉教授でもある建築家 高松伸(たかまつ しん)氏です. 島根県に生まれ、京都大学で建築学を専攻後(博士課程まで)に建築事務所を設立します. 大阪道頓堀にかつてあった「キリンプラザ大阪」などメタリックな素材を用いた左右対称の外観・造形性から、ポストモダンの建築家の一人として称されています. このターミナルはその時代から後の作品となりますが、大きなボリュームにも関わらず要所要所にポストモダンな要素を織り込んでいます.
0045:長崎港ターミナルビル エントランスホール1階から

0045:長崎港ターミナルビル 館内案内図

0045:長崎港ターミナルビル 1階待合室①

0045:長崎港ターミナルビル 1階待合室②

それではメインエントランスから館内へ入っていきます. まず目に飛び込んできたのは、筒状のボリュームの内部であるエントランスホールです. 掲示板なのか、「海の日」ポスターが吊り下げられた巨大なRCの壁、斜めに切られた部分はトップライトになり、館内を明るく照らしています. 灰色コンクリートの無骨な外観とは裏腹に、ホール内の仕上げは白一色です. 待ち合いスペースは楕円シリンダーの真下にあるため、海側に向かって天井が少しずつ上がっているのが、「海に開く」という感じがしていいなと思います.
0045:長崎港ターミナルビル エントランスホール2階から

0045:長崎港ターミナルビル 2階待合室①

0045:長崎港ターミナルビル 2階待合室②

そして2階へと上がります. 2階の殆どは待ち合いホールで、あまり待合客はいませんでした. 楕円のシリンダーはそのまま天井にも反映されてるので、ヴォールトのような空間になっていました. 窓からは長崎港が、天気のいい日には女神大橋までが一望できます. エントランスホールの2階には、何故か黄色い橋がありました. 子供は喜びそうですが、なんの為にあるのでしょうか?

さてさて今回はここまでとなります. 横に長く、高さは低くだった横浜のターミナルとは対称的で『でっかくシンボリックに!』というアグレッシブさがあって面白いですね. まだまだ海運ターミナルの建築も捨てたもんじゃありません. 軍艦島へ行く際は一度じっくりと、高松建築要素満載のこのターミナルを見てみてはいかがでしょうか. それでは今回はここまで〜


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