葛西臨海水族園 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

葛西臨海水族園

           
0056:葛西臨海水族園 メイン

0056 - 葛西臨海水族園
竣工:1989年
設計:谷口吉生
住所:東京都江戸川区臨海町6-2-3
賞歴:1994年公共建築賞(文化施設部門)
   1991年BCS賞

皆様どうも. 前回は谷口吉生氏設計である「葛西臨海公園展望広場レストハウス」をご紹介いたしましたが、葛西臨海公園には谷口建築がもう一つ、水族館という形式で現存しています. というわけで今回は同公園から連続して葛西臨海水族園をご紹介です. 竣工は1989年と前回のレストハウスよりも5〜6年早く完成しており、水族館施設としては唯一の谷口建築でもあります. それではいってみましょう.
0056:葛西臨海水族園 右手にレストハウス 左が水族園

0056:葛西臨海水族園 正門ゲート

0056:葛西臨海水族園 RCの列柱が印象的なショップ棟

0056:葛西臨海水族園 ショップ棟の列柱

水族園へは公園中央ゾーンから左に曲がった先にある正門ゲートから入場することになります. 案内板も多くあるので、まず迷うことはありません. バブル経済真っ盛りの中で開園したこの水族館は、当時東日本でも有数の規模を誇る水族館として人気を呼び、全国から観光客が殺到したといわれています. 当時記録した開園初年度年間入場者数355万人は、当時の日本記録(須磨海浜水族園の240万人)を軽く塗り替えてしまうほどの伝説的記録です.

正門ゲートを入って右へと歩くことになりますが、この際に写真のようなショップ棟が左手に見えてきます. 本来ならば鉄骨で事足りる柱部分をRCでつくることで、列柱としての存在感が強調されています. 加えて突端部の外観も屋根・柱・通気口・扉に至るまで左右対称で、それゆえの綺麗さ・美しさが感じられます. これも谷口氏の設計ですよね?
0056:葛西臨海水族園 チケット売り場へのアプローチ

0056:葛西臨海水族園 入口ドーム外観①

0056:葛西臨海水族園 入口ドーム外観②

0056:葛西臨海水族園 境界の消えた池と海

ショップ棟を横目に歩きながら、水族館本館のあるドームへと向かいます. ドームの見えるストリートに入ると、写真のようなシンメトリーのある印象的なアプローチ空間がお出迎えです. 陸橋の高架下のような薄暗い場所にあるのが入場ゲートで、ここから券を購入して入場します. 大人一人700円と、この規模の水族館施設としてはかなりお安い値段です. (大体の水族館は2000円程度)

ゲートを通って見えてきたのは、ガラス張りの印象的なエントランスドームです. レストハウスも相当でしたが、こちらも十分に美しい. ガラスの透明感も相まって、ピラミッドのような屋根部分もはっきりと見えます. 建築というより一種の美術作品のような美しさが漂うこのガラスドームですが、ドームを中心に円状に展開する人工池の水盤が、このドームをより一層幻想的に演出します.

この池で特徴的なのは、写真のように池と東京湾との境目が目立たないように作られていることです. 実はこの池やドームがあるのは水族館の屋上部分で、東京湾の水面よりも10m以上高くなった場所にあえて人口池を造成しています. これによって本来見えるはずの東京湾の海岸線は見えず、池と東京湾があたかも続いているような感覚が生まれるという巧妙な仕掛けが施されています. 屋上にあるのがドームだけというのもあって、遮蔽物は一切なく広々とした東京湾を一望しながらクリスタルなドームを眺めことができるというなんとも素晴らしい光景が生まれています.
0056:葛西臨海水族園 ドーム内部

0056:葛西臨海水族園 大理石仕上げの受付

0056:葛西臨海水族園 ドームを内側から見上げる

0056:葛西臨海水族園 ドームの曲面を構成するスチールフレーム

ドーム内部へと入っていきましょう. 内部にあるエスカレーターから、水族館の展示スペースへのあるフロアへと降りることとなります. エスカレーター手摺にはエメラルドグリーンのガラス、受付部分には大理石と曇りガラスを用いて、素材のひとつひとつが美しく設えられています. 個人的には床面のタイルがドームの広がりに沿って、8角形の放射状に割り付けられていたことに、隠れた強いこだわりを感じていました.
0056:葛西臨海水族園 円筒にくり抜かれた天窓

0056:葛西臨海水族園 潜水艦のような丸窓

0056:葛西臨海水族園 『ヨットの帆』をモチーフにしたテラスデッキ

0056:葛西臨海水族園 テラスデッキからドームをみる

水族館自体は、客が少なければ1〜2時間少しで回りきることができます. ドームで曲面を使用していたり、水族館という施設柄もあってか、円筒状にくり抜かれたトップライトや潜水艦の丸窓などが野外スペースで確認できます. 水平・直線のメリハリが強調された作風のある谷口氏の作品群では、意外とポップな可愛らしさのある作品ではないかと、そんな真新しさも感じました.

展示の終盤には、ヨットの帆をイメージしたとされるテントテラスがあります. 屋上からもこのテントがひょこっと頭を出した状態で確認できます. 水面にヨットのようなモチーフとして浮かび上がります. テラスから本館を見ると、ドッシリとしたRCの躯体がグルッと円を描くように伸び、その上に建つドームはさながらモスクのような、そんなシンボリックな雰囲気があります.

そういうわけで今回はここまでです. レストハウスに水族園と、葛西にはガラスの美しい谷口建築が2つもあるという意外な隠れ建築スポットであることに驚きました. 公園というロケーションでもあるので、こういう場所には是非天気の良い日に行って、森林レジャーやレクリエーションを楽しみながら訪問するのもいいのではないかと思います. というわけで今回はここまで〜


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