



バス停を降りて公園に入るとすぐに見えてくるその独特な外観は、美術館とは到底思えないような雰囲気を醸しだしていました. 底が狭く上渕
(うわぶち)の広いコップのような外観をしていて、加えて外壁は全面ガラス張りという現代的デザインで仕上がっています. 外壁全体が外方向に傾いているため、本館入口の自動ドアも写真のように斜めに取り付けられているというのには驚きました.
グネグネした有機的な外観は全面ガラス張り、加えてこの斜めの入口を見ると東京六本木の
「国立新美術館」も同じ特徴を持っていたな〜と思い返してしまいます. それもそのはず、この美術館は「国立新美術館」も手がけた日本を代表する建築家 黒川紀章氏が手がけました. 同氏が晩年まで手がける全面ガラス建築の系譜は、意外にも福井にありました.




それでは館内に入っていきます. この斜めの入口に関しては、新美術館にある斜めドアに頭をぶつけた痛〜い思い出があるので、半ば体を屈めながら入りました. 近未来感ある有機的なデザインの机がある受付から券を購入して、2階の特別展示室へと向かいます. 館内のメインカラーは白. 外壁はガラス張りなので、外部の自然光が白一色の空間をより明るく照らしそうな感じがします.
訪問当日は曇空でしたが…2階へのアプローチは、受付横のスロープから本館の外縁をらせん状に登っていくという非常にユニークなものです. ガラス張りのため外がハッキリと見えるので、まるで公園の森林を散策するような印象を受けます. 訪問時が冬なので木々は枯れっぱなしですが、夏には美しい緑が館内に入り込むイイ空間なのでしょう. スロープを登った横にはカフェが併設されていて、公園内の景色を楽しむことができるようになっています.
スロープを登りながら思ったのは、このガラス外壁がなぜ斜めなのかという部分です. これには設計上の理由があり、どうやら福井市の夏至の太陽光の傾斜角を考慮して、外側に13度ほど傾けることで環境負荷を低減させることができるとらしいです. 全面ガラス張りという一見すると熱負荷がすごそうな外観ですが、形態的操作は意外とエコ志向だったりするんですね.
実際その効果はでているのでしょうか?



特別展も堪能して、もう少し施設の奥へと足を運んでみると、2層分が吹き抜けとなったスペースを発見しました. ガラスの外壁も相まって、スペースとしては狭いはずが不思議と開放的ば空間に感じます. 1階には福井県に縁の深い彫刻家 高田藤厚氏の偉業や歴史を学ぶ常設展示室の他に、ワークショップなどが開催できる『子供アトリエ』と呼ばれるスペースが、先ほどの吹抜け部です. 扉の色が黄色と水色の色彩や家具を見るに、超開放的な図工ルームのようで面白そうです.
じつは美術館は主に東側で、西側には『市民アトリエ』と呼ばれる創作スペースが集中して配置されています. 子供や市民のアート・創作意欲を促す『アートラボ』の愛称はこういう部分に由来しているのでしょう. 文化発信の美術館であり創造のラボでもあるガラス張り美術館、実にユニークな建築体験でした.
今回はここまでとなります. 展示品の保存関係上クローズな(閉鎖された)外観の多い美術館施設ですが、この美術館はとにかく外部にオープンで驚かされます. ガラスに周辺環境が反射することで外部空間に同化し、内部へは自然環境を取り込む黒川氏のうねるガラス建築は、後の作品である「福井県立恐竜美術館」でも見られますので、こちらも後々訪問できれば紹介していきたいですね. それでは今回はここまで〜
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