


豊島へのアクセスは香川県側の高松港、岡山県側の宇野港からフェリー・旅客船が出ていますが、どちらも一日10便もありませんので時刻表は必ずおさえておきましょう. 高松・岡山に宿を確保している人はなおさらです. また3便ほどですが犬島を直接結ぶ航路も設定されていますので、宝伝港から午前は犬島、午後は豊島と2島を一度に回る可能性も0ではありませんが、時間勝負になりますのでオススメはしません. 詳しくはサイト(
URL)からどうぞ.
豊島の島内を行き来するマイクロバスやタクシー、レンタカー・レンタサイクルなど移動手段が充実していますので、お好みの手段で島内を散策できます. 写真は2013年の芸術祭(夏期)の時期ですが、温暖な瀬戸内の気候に加えて超炎天下の時期だったので、アップダウンの激しい美術館までの道のりをサイクリングするのは相当な体力を要する気がしてなりませんでした. 途中「島キッチン」でバスを下車したので、今回はその徒歩で撮った写真からです.
米が豊作となりやすい環境から『豊かな島』ということが由来となった豊島は、直島と小豆島のほぼ中間に位置する直島諸島の一つで、小豆島と同じ行政区である小豆郡に属します. かつては酪農も盛んで『ミルクの島』と呼ばれるほどの盛況ぶりを見せていましたが、今では坂出にその座を譲っています. しかし完全になくなったわけではなく、写真のように牛が飼育されている民家も見受けられました. まさに離島暮らしって感じのある豊島の生活風景に魅了されっぱなしです.




そんな離島にある田舎の風情を横目に歩いていると、道路の向こう側に人だかりができていました. どうやらあそこが美術館のようですが、それよりも私は目の前に広がるオーシャンビューの光景を拝みたくなって、炎天下の日中にも拘らず小走りでその場所まで走っていました.
道路が急カーブしたその先には、向こうまで水平性を成して続く瀬戸内海が一望できる素晴らしいビュースポットがそこにはありました. 豊島に来る以前は直島で観光していましたが、標高の低い南の方しか回らなかったので、このような標高の高い場所から瀬戸内海を眺めるのは初めての経験でした. この緑の生い茂る豊島と瀬戸内海を堪能したくて、わざと豊島と夏期のスケジュールに組み込んでましたが大正解でした.
超暑いけど…そんな海と島の光景に見とれながら視線を右に向けると、今回の目的地である美術館の玄関、そして奥にはメインとなる真っ白な本館とショップ棟が並んでいます. 雑誌で見るよりも非常に建物高が低く、周辺とのランドスケープにうまく隠れたような印象を感じます. チケットは玄関右手にある、斜面に半分埋もれたRC造のチケットセンターで、入場料1540円は国内有数の高額料金ですが、瀬戸芸のチケットがあれば500円ほど値下げされます.





それでは本館となるアートスペースへ…といきたいですが、この美術館は本館へ入る前に舗装された回遊路を通って敷地内を一周しなければなりません. そんなわけで回遊路を歩いて奥手の森へと入っていきましょう. 奥に見える棚田の景観もさることながら、昔のままで残り続ける緑豊かな森のアプローチ、そしてその隙間から覗かせる島一つない瀬戸内海のビューなど、豊島が長年培ってきた美しい自然環境を感じることができました. この回遊路もそのためのアプローチと考えるべきでしょう.
2010年に開館したこの豊島美術館は、ベネッセでおなじみ福武財団のプロジェクトによって計画されました. 設計を担当したのはSANAAのメンバーでもある建築家 西沢立衛氏で、今回のこの作品は西沢氏個人のものです. 最大の特徴は文字通り膜一枚で構成された真っ白のコンクリートシェルで、最長60mものスパンがとぶワンルームの大空間となっています. 既存の等高線をベースとして、盛土を型枠にして造成された幻想的なシェル空間は国内外で高い評価を受け、建築学会賞・JIA賞・村野藤吾賞と著名な賞を総なめにしています.
芸術祭期間中ということで、本館入口は写真の通り長蛇の列. しかも本館へは『靴を脱いで入る』ということで、真夏の太陽でジリジリと焼けた路面を裸足で待つのはキツかったです. 当然館内は撮影禁止. 館内には彫刻家 内藤礼
(ないとう れい)氏の『母型』が展示されており、地面から出た水滴が床面を自由に徘徊し、ある場所ではたまり場になって排水となる穴に戻っていくという、眺めるだけでも楽しい展示作品がありました. 展示空間というよりは訪れる人が楽しんだりゴロッとできる憩いの場、曲面のシェル空間ということもあって、そんなユルさの感じられる空間に感じました.


本館はできませんが、敷設されてるシェル構造のショップ棟であれば撮影可能らしくバッと掲載. 内部の明るさは一部が切り取られた穴状の開口から自然採光という形で確保しています. 豊島のランドスケープに沿い、その土地に降り注ぐ太陽で環境を補完するというスタンスは、シェルという形態からは想像がつかないほどに土着的な思想のもとで組み上がっています. ちなみに疑問なんですが、雨や冬の環境の場合ってどうなるんでしょう、閉館してるのですかね?
今回はここまでです. 春・夏・秋と瀬戸内芸術祭は開催されるので、今後は秋の環境で美術館を眺めてみたいなと思っている最近ですが、もし実現できればそれも追記でレポートしていきたいですね. とにかく美術館も含めて豊島はお気に入りなので、面白そうなポイントがあれば今後も取り上げていきます. というわけで今回はここまで〜
◆ この記事に関連する建築マップ
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瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
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