




写真1枚目は宮浦の埠頭全体を撮影したものです. 左手に見える薄い鉄板が乗っかった施設がフェリーターミナル. 右手にある赤いオブジェは草間彌生氏作の『赤かぼちゃ』、近年完成した
「直島パヴィリオン」の姿も奥に確認できます. 直島の西に位置する宮浦港に2006年に完成したこちらのフェリーターミナル『海の駅なおしま』は、プリツカー賞を受賞した建築家ユニット SANAAが手がけました.
正方形の薄く広いの鉄板屋根を細いポールが支えるという明快な構造ですが、海風のある海岸の環境を考えると、台風時に本当に飛ばされないのでしょうか. 天井はデッキプレートをそのまま使う低コストな仕上げに見えますが、その波型から生まれるストライプ模様
(写真3枚目)は、空間の奥へとグッと伸びることで不思議な遠近感を与えています. 外が明るい場合は、内部空間は徹底的に暗くなり、建物の内外に強い陰影がうまれる
(写真4枚目)のも面白いポイントです.







ターミナルの南にはバスターミナルが設置され、観光客はここから発着する町営バスに乗って直島の各エリアへと向かいます. 夏は厳しいのですが、天気が穏やかな日であれば屋根の下を冷たい海風が通り抜けていくので、少し暑い環境であっても涼めるところが個人的にはよかったです.
この建築のポイントは屋根を支える構造そのものです. 6.7mスパンのグリッド状に配置された円柱の直径は85mmと屋根を支える構造柱としては非常に細く、手の大きい人なら普通にガシッと握れます. この円柱と鏡面仕上げされた一部の壁によって支えられた大きな鉄板屋根は、私個人としてはミースの「バルセロナ・パビリオン」に似たものを感じます. 鏡面に町や海の情景が投射される仕掛け
(写真5枚目)も面白いですね.




館内にはお土産やカフェスペースのある四方ガラス張りの「ターミナルホール」が配置されています. このスペース内部の天井は白く仕上げられていて、そこから円柱が落ちてくる様は、SANAAの代表作でもある
「金沢21世紀美術館」に近い雰囲気があります. しかし一方カウンター
(写真2枚目)やロッカーの囲い
(写真3枚目)、外のトイレ
(写真4枚目)等はコンクリートで仕上げられており、どこかSANAA建築らしくない、むしろ安藤建築のようなデザインがあるのも珍しいです.
今回はここまでです. シンプルで素朴な外観に見えてしまう外観ですが、構造やディティールという裏の努力が強く感じられる建築空間になっていました.
いかに単純で、いかに細く、そしていかに軽くという部分がこのように表現されることに、当時の技術の進歩を感じさせられます. ちなみに直島の名産は「塩」ということで、ターミナルに寄った際はぜひ買っておきたいお土産です. ではでは今回はここまで〜
2016.7.10. 掲載写真を2016年春訪問分に更新&文面修正
◆ この記事に関連する建築マップ
・
瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
- 関連記事
-
コメント