2016/03/23



美術館へは『マルキュー』でおなじみ渋谷109ビルの分かれ道を右へ進み、「Buknamura」のある分かれ道を左へと行き、緩やかな上り坂を少し登った先にある壁面が独創的なデザイナーズマンション(写真2枚目)のある道を右に入ってすぐの場所です. 渋谷駅から徒歩ですと10〜15分程度ですが、渋谷駅から歩くのが嫌な人は京王井の頭線 神泉駅で降りると5分程度で到着できます.
渋谷駅のすぐ西のエリアになる松濤(しょうとう)という地名は、明治9年に旧佐賀藩主だった鍋島家が開園した茶園『松濤園』が由来です. また江戸時代の紀伊徳川家の下屋敷が位置する屋敷町であったという名残もあり、現在では首都圏の高級住宅街の一つとして知られています. そんな閑静な住宅街の一角に建っているのがこちらの美術館. 繁華街としての立ち位置が強い渋谷区内にある唯一の美術館です.





それでは外観です. 最近の美術館を見てると真っ白なハコやガラス張りの建物が目立ちますが、この美術館はそれらとは対極にある重厚感溢れる石張りの美術館. 韓国産紅雲石で敷かれた外壁は、中央の玄関へ向かうにつれて奥に引っ込むようにカーブし、上の屋根は外壁と同様のカーブを描きながら道路側へ飛び出しています. 両隣の建物と比較すると一目瞭然な装飾性あふれる外壁を意図的引っ込ませることで、第一印象となる『顔』を広く見渡せるように工夫されています.
美術館の設計を手がけた 白井晟一(しらい せいいち)氏は、戦後のモダニズム建築の流れに反して哲学的かつ装飾性豊かな建築を手掛けました. 建築を学びながらも戸坂潤やカール・ヤスパースなどの哲学者に兄師・師事するという異色の経歴をもち、長崎にある「親和銀行本店・懐霄館」において日本芸術院賞を受賞した、昭和期を代表する建築家です. 松濤美術館は白井氏晩年の代表作品のひとつで、開館した2年後に78歳で亡くなりました.





それでは内部へと進んでいきます. 美術館は地上2階・地下2階の4層構造で、中央部には楕円形に切り取られた中庭があります. 展示室はこの中庭の周りに配置され、観覧客はこの中庭をぐるっと周回する動線になっていました. 受付すぐ左のロビーにある大きい丸窓は、和風風情のある美しい庭を望めるピクチャーウインドウとなっています. 中庭は噴水が設置された水空間となっているのですが、地下2階は事務スペースらしく撮影はできませんでした.





最後は中庭です. 中庭の1階フロアにはエントランスから真っ直ぐとブリッジが伸びており、自由に入ることができます. 残念ながら展示室への扉は締め切られていましたが、当時はこのブリッジを介する動線を考えていたと思います. 上を見上げれば青々とした空を眺められ、ガラスには周辺の建物の風景が投影されています. 個人的には中庭を支える柱のスチール仕上げが、空と同化して青く見えたのが幻想的でした.
敷地面積約500㎡という小規模な美術館ながらも、中庭ブリッジを介した展示室への動線やアーチ扉・階段のデザインなど造形力のある意匠を活かして、美術館とは思えない異世界な空間を作り出したことは実に見事だと思います. ただ美術品よりも建築が造形的に勝ってるという意味では、美術館向けの空間ではなかったかもという感じはしています. 実際空間がすごすぎで、肝心の展示品があまり記憶に残っていないんですね… そんな独創的な白井建築、気になる方は是非. というわけで今回はここまで〜
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