



最寄りとなるのは千葉都市モノレール 葭川公園
(よしかわこうえん)駅です. 何気に知られてませんが、このモノレールは上から吊り下げる『懸垂式』としては営業距離世界最長のギネス記録を持っています. 全国でも珍しいので一度乗ってみることをお奨めします. 駅に降りてからは東に向かって5分ほど歩くこととなりますが、モノレール駅などで足腰が弱い方はJR千葉駅から京成バスを利用しましょう.
国道126号線の脇に建つこの美術館の外観ですが、全国の美術館と比較するとその巨大さは一目瞭然です. ピラミッドのように階段状に象られたファサードや下部分の列柱なども見るに、美術館と言われなければどこかの宗教団体の施設と勘違いしそうです. 隣地との斜線制限の兼ね合いでこういうセットバックがなされてますが、後ろの外観を見るとその削り方の大胆さ・荒々しさがよくわかります.




市街地中心部の狭い敷地に縦に積層するようにして建築されたこの美術館は、同区内の役所である『中央区役所』との複合施設として1995年に開業. 「あべのハルカス美術館」や「森美術館」など、高層ビルのワンフロアを美術館として機能させるケースは今となっては珍しくないですが、この美術館は「愛知県美術館
(1992年)」などと並んでその初源的な流れを有する建築の一つだと思います.
設計を手がけた建築家 大谷幸夫
(おおたに さちお)氏は、世界的建築家 丹下健三氏の研究室メンバーとして
「広島平和記念資料館」等の主要プロジェクトに従事し、1964年から20年間にわたって東京大学で教鞭をとる傍で
「国立京都国際会館」や「金沢工業大学」などの名建築を手がけました. また日本都市計画の草分けとしても活躍し97年には日本建築学会大賞を受賞、2013年に逝去しました.
低層部をよく見ると、レトロモダンな西洋建築の上にの複合施設のボリュームが覆いかぶさるように建っています. 下の建築は川崎財閥系の建物を多く手がけた大正期の建築家 矢部又吉
(やべ またきち)氏が設計した「旧川崎銀行千葉支店」です. 大谷氏がこの建物で都市計画的に挑戦した特徴としてこの銀行建築の保存が挙げられ、古いお堂の上を新しいお堂で覆いかぶせる『鞘堂
(さやどう)』という日本古来の方式を用いて保存・復原しています.





では内部へと入っていきます. 入口は正面両脇の、ガラス張りで設えられた部分にあります. 基本手に北側が美術館、南側が区役所のエントランスとなっていますが、エレベーターは共用のためどちらからでも入場できます, 保存された銀行建築は『さや堂ホール』という名称で市民向けの貸し出しホールとして活用されており、当日はフリーの展覧会があったため入場ができました.
イオニア式オーダーの重厚な外観をもつ矢部氏の建築意匠はなるべく残し、耐震基準を満たしていない建物に対してRCコンクリートを打ち増しして保存を図っています. 外壁だけのファサード保存が定石となりつつある文化財建築の保存ですが、こういうスタンスで外壁にとどまらない保存を行っているというのは驚きました. しかしながら一般的な保存と比べると非常に大掛かりな試みのため、ある意味特殊解に留まってしまった感が否めないのが悔やまれます.



美術館は7・8階のフロアになります. 観覧費用は企画展・コレクション展を交互に実施する場合もあれば、フロア別に分ける時期もあるので、その点に関しては公式サイトのカレンダーをご参照ください. 2フロアにまたがったロビーは専用階段でアクセスでき、幾何学模様のデザインが施された壁面が印象的だったのを覚えています.
美術館というよりは公共施設内のギャラリースペースのような意味合いが強いですが、モダニズム趣向ながらもユーモラスのある外観は、望遠レンズを覗き込みながらいろいろ探せるほどに面白さに満ちたものでした. 千葉の中心部へ来た時は是非、ではでは今回はここまで〜
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