

美術館の正面となる南側の外観を掲載しています. ミース、ライトと並んで『近代建築の三巨匠』と称されるコルビュジエは、主にスイス・フランスを中心として数多くの近代建築を手がけました. 彼の設計スタンスは前・後期で大きく分かれ、前期は「サヴォア邸」「ジャンヌレ邸」など白い箱型をベースとした住宅群を、後期は「ユニテ・ダヒタシオン」や「ロンシャンの礼拝堂」な造形性豊かな建築を中心とし、この美術館は時期的には後期の作品です.
美術館の設計を手がけたのは確かに彼ですが、実際に彼が担当したのは基本設計まで. その後は彼に師事した前川國男氏・坂倉準三氏・吉阪隆正氏の三名が共同で実施設計を担当して完成させました. 直方体の展示室や1階のピロティは前期の設計スタンスに感じますが、Vの字に象られた階段支柱は後期に近く、双方のスタンスを折衷させたような外観です. 実はこの4年前にチャンディガールでこの外観そっくりな美術館を設計しているのですが、これはその兄弟作なのでしょうか. 真意は不明です.


それでは館内へを足を進めます. 常設展は大人430円ですが、
毎月第2、第4土曜日と文化の日は無料開放という太っ腹なこともしているので、お安く
(というか無料で)入りたい方は無料開放を狙って訪問することをお奨めします. 常設展は1階中央にある、三角形に開いたトップライトが差し込むアトリウム空間『19世紀ホール』と呼ばれるスペースから2階へとスロープを上がって2階展示室へと向かいます.
ここで常設展示される作品の多くは実業家 松方幸次郎
(まつかた こうじろう)氏が収集した『松方コレクション』とよばれるものです. 美術コレクターの彼は西洋絵画・彫刻等千点以上を収集したのですが、世界大戦の影響でパリにあった400点を敵国資産としてフランス政府に徴収されます. 終戦後の返還交渉で、返還する代わりとして条件づけられたのが『返還物を展示する美術館の設置』でした. その末に開館したのがこちらの美術館なわけで、経緯だけをみると非常に複雑な事情のもとでこの美術館は開館してるんですね.
先ほどのアトリウムを中心にぐるりと一周する『ロの字型』の動線となった2階展示室には自然光を取り入れるハイサイドライト
(今は蛍光灯に置き換え)や、当時ギャラリースペースとして設計された 中3階への階段
(現在は立ち入り禁止)など、現代での美術館の展示室では見られない仕掛けを今でも確認することができます. 余談ですが彼の弟子であった坂倉準三氏は、この美術館をベースにした建築として
「神奈川県立近代美術館 鎌倉館」を手がけていました. 既に閉館してしまいましたが、師弟は似るのだな〜としみじみと感じさせられました.
というわけで今回はここまでです. 当日は写真ダメという感じの撮影規制を受けたのですが、サイトを見返してみると常設内の撮影はOKと書いてありました. 私の勘違いだったのでしょうか、写真も少ないので再度行った時にでもしっかり写真撮って追加しようと思います. ではでは今回はここまで〜
【追記 2016.7.17】
ついに本日、西洋美術館がユネスコの世界文化遺産に決定するというニュースが報じられました. 某国のクーデターがあって延期も騒がれてましたが、個人的には非常におめでたいことだと思います. しかしこうなりますと、常設展の観覧料の値上げや写真撮影が厳格化するんじゃないかということが一番の心配ではありますが、そうなる前にもう一度東京行って撮影しておきたいな〜と考えております. ではでは.
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