


まずは外観です. 大人の身長ほどはある大きな窓枠が並ぶ外観ですが、最上階は窓上部分がアーチになっています. 外壁に張り巡らされたブラウン調のレンガタイルは、夜間なので解りにくいものの、非常に落ち着いた色合いを出すとともに重厚な雰囲気を醸しています. 初めて来た時はただのオフィスビルじゃないかと思ってましたが、烏丸通に沿って南側へ行くといかにも真新しい鉄骨フレームがむき出しになっており、工場のような雰囲気のある空間が確認できます.
この新風館は2001年に開館した複合商業施設ですが、一部の建物は1926年に竣工したオフィス建築「京都中央電話局」をコンバージョンしています. 市の登録有形文化財第1号にもなったこのビル建築を設計したのは
「JPタワー(旧東京中央郵便局)」で紹介した逓信省出身の建築家 吉田鉄郎氏です. 「東京中央郵便局」は高層タワーに「大阪中央郵便局」は取り壊しになりましたが、京都電話局は竣工当時の雰囲気を色濃く残す吉田建築としても名高いものです.



それでは先ほどから気になっていた鉄骨のある場所から内部へと入ります. するとどうでしょう、鮮やかな黄色と赤で彩られたメリーゴーランドのような円形ホールを中心として、周囲は青色の鉄骨で組み上げられた廊下と店舗で囲まれています. 旧電話局の裏側にあたる部分は、先ほどの窓は入口扉やショーウインドウにはめ変えられています. 重厚な外観とは裏腹に、内部はこのようなアミューズメントパークのような空間、私はこのギャップに非常に驚かされました.
商業施設としての開館に向けて、運営元のNTTはイギリス人建築家 リチャード・ロジャースに設計を依頼します. 鉄骨フレーム等を多用して構成される建築様式『ハイテック』を特徴とし、「ポンピドゥー・センター」や「ロイズ本部ビル」などで世界的な評価を得たプリツカー賞受賞建築家です. 日本ではこれ以外にも「テクノプラザ
(岐阜)」「政策研究大学院大学
(東京)」なども手がけています.
ロジャースは烏丸通沿いにL字型に残した電話局の東側に、新しくコの字の建物を増築することで、中庭をロの字で囲い込むように配置しました. これによって外側は電話局による重厚なイメージを、内側は鉄骨による近代素材が支配する空間になり『新しさと古さ』がうまく共存する面白い空間に仕上がったのです. 京都のビジネス街にある憩いの場ということで私も度々利用していましたが、ホテルや地下施設を新しく増築するため3月27日に閉館. 幸い既存部分は残るということですが、どのように生まれ変わるのか今後に注目です. ではでは今回はここまで〜
【追記 2016.6.16】
閉館から3ヶ月後、烏丸御池にフラッと立ち寄った際に撮影した写真を追加で掲載します. 設計は引き続きNTTファシリティーズ、施工は清水建設が担当していますが、ロジャーズ氏が手掛けたとされる鉄骨のスペースは跡形もなく解体されていて驚きでした. あのメリーゴーランドのような楽しい空間は二度と見れないとは残念です. 辛うじて残る旧中央電話局はどうなるのか、イメージ写真も貼られていなかったで不明ですが今後を待ちましょう.



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