和歌山県立博物館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

和歌山県立博物館

           
0081:和歌山県立博物館 メイン

0081 - 和歌山県立博物館
竣工:1994年
設計:黒川紀章
住所:和歌山県和歌山市吹上1-4-14

皆様どうも. 前回は本サイト初の和歌山県から「和歌山県立近代美術館」をご紹介しました. しかしながら同県を代表する黒川氏の公共建築はこれだけではありません. 実はもう一つ、近代美術館のすぐ南に黒川氏の作品が隣接しています. 今回は和歌山城近辺に佇むもう一つの黒川建築 和歌山県立博物館をご紹介します.
0081:和歌山県立博物館 美術館との位置関係

0081:和歌山県立博物館 全体外観

0081:和歌山県立博物館 カーテンウォール

0081:和歌山県立博物館 美術館との連絡ブリッジ

写真1枚目は隣の近代美術館とセットで撮影した際のものです. 一見すると2つの建物は2階部分をブリッジで連結していること以外は各々独立していると思われそうですが、空調・電気系統等の設備は一体的に運用されています. つまり本来この2つの建物は一体の建築物であり、建築系雑誌では「和歌山県立近代美術館・博物館」とセット表記が一般的です. そのためこの建物も近代美術館と並んで公共建築百選に選定されています.

そんな一体的な運用がされている博物館ですが、外観からも解るように近代美術館とは全く印象の異なる建物だということがよくわかります. 正面は円弧状のカーブを描き、独特なフレームで組み込んだカーテンウォールが外壁全体を覆います. 近代美術館は壁面の多いクローズドな印象でしたが、こちらは一変してオープンな印象です. カーブの端部は鋭角になっており、関西生まれの自分としては「うめきたシップ」を思い浮かべました. 加えて入口は庇のある回転扉で、近代美術館よりも入口感のある設えに感じます.
0081:和歌山県立博物館 エントランスホール

0081:和歌山県立博物館 階段手摺・照明デザイン

0081:和歌山県立博物館 2階からエントランスをみる

0081:和歌山県立博物館 館内奥にある模型

館内ホールは外部光によって照らされた2層吹き抜けの空間で、天井中央には丸縁に暖色ライトを組み込んだ間接照明が組み込まれています. カーテンウォールに沿って建物東側へと進むと、利用自由な休憩スペースの傍に全体模型が展示されています. 鋭角となった部分は南側もガラス張りとなっているので、夏場は太陽が照りつけて相当暑そうだな〜と感じました. 2階に上がる際に年配の方が降りてきたのですが、グネグネの黒川デザインの手摺に苦労していました. やはりあれは機能的には不向きですね…

高野山や熊野古道、紀伊徳川家ゆかりの品などの資料を収集・公開することを目的に設立された博物館は、1971年の開館当初は和歌山城二ノ丸跡にあったといわれています. 今でこそ流れのある既存の公共施設の統合ですが、90年台前半で美術館とこのような統合をした事例はあまり見られません. そういう意味では今後の公共施設統合型のまちづくりを予見した先進的なケースではないかと思います.
0081:和歌山県立博物館 2階奥にある無料展示スペース

0081:和歌山県立博物館 無料展示スペースから差し込む光

0081:和歌山県立博物館 扉取手のデザイン

館内の常設展は大人280円で鑑賞可能ですが、2階へ上がれば県の歴史に関わる資料を展示した野外スペースを無料で鑑賞できます. 外観やエントランスの印象もあって、隣の美術館とは別物の位置付けで意匠を手がけたのかと思いましたが、野外スペース上部をみると美術館と同じ湾曲した天井と壁の間から太陽の光が差し込んだデザインを確認できたので、完全に独立させているわけではないようです. そうするとやはりあのカーテンウォールの浮きっぷりが際立ってしまうわけですが…

美術館鑑賞もできて博物館鑑賞もできる和歌山城下の黒川建築、ぜひ一度見に来てみてはいかがでしょうか. ではでは今回はここまで〜


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