



瀬戸大橋の四国本土側に位置する沙弥島をはじめとする湾岸地区には、瀬戸大橋に関連した数多くの施設があるのも一つの特徴です. なかでも目を引くのは全高108mもある展望塔「瀬戸大橋タワー」、ドーナツ型の展望室が数分かけて上昇した後、中心のポールを軸として360度ぐるっと回転する珍しいタイプの展望台です. そんなタワーの傍にピラミッド型の屋根がぴょこっと奥から見えているのが写真からわかりますが、こちらが今回の主役となる記念館です.
香川県が事業母体となる歴とした公共施設なのですが、その佇まいは公共建築のそれからすれば明らかに独特なものです. ピラミッド形の屋根を中心に、四方に小さなピラミッドの屋根を配置した神殿のような佇まい. 沙弥島からのバスの途中でこの記念館を見たのですが、はじめは宗教施設の祭殿か何かと勘違いしていました. RCで覆われた外壁に施されたアーチのデザインやシンプルな丸柱が並べられた入り口など、細部を見れば見るほど神殿感が際立って見えます.



じつは訪問当初この建物に関しては全くのノーマークだったのですが、私個人の建築的な勘がビビッときてしまい、バスまでの残り時間で中に入ってみることに. 西側玄関に入ってすぐのエントランスホールは天井からのトップライトが館内を照らす広々とした空間. アート作品にもなりえそうな正面の壁面デザインや、上部に張り巡らされた独特な木格子もカッコイイです.
こちらの記念館は、世界最長の鉄道道路併用橋「瀬戸大橋」の竣工記念として1988年に開催された『瀬戸大橋架橋記念博覧会』のパヴィリオンの一つだったものを、展示施設として活用したものです. 「明石海峡大橋」や「しまなみ街道」など他ルートに先駆けて開通したこの橋は、宇高連絡船でしか繋がらなかった本州〜四国間の交通・ライフラインを劇的に変えることになりました. この施設はまさにその栄華を讃える象徴として、今もこの場所にあり続けているのです.




館内には瀬戸大橋で実際に使用されている技術・この国家プロジェクトに関わった人々の情報等が展示されています. 観覧無料なので自由に観覧ができるのは非常に嬉しいですね. 観覧スペースの途中には中庭が設けられており、アート作品のようなオブジェが配置されています. 個人的にはエレベーターに使用されている石材が風土感のある意匠にみえてイイなこれと思ったりも. そこで職員に設計者を尋ねたら「県のひとでね〜 丹下さんと県庁舎を手がけた人なんよ〜」と答えてピンときました.
ここで初めて設計した方の紹介ですが、手がけたのは建築家 山本忠司
(やまもと ただし)氏です. 香川県建築課の課長という公共建築設計のトップにいた人で、丹下健三氏の代表作である
「香川県庁舎 旧館」の実務設計を指揮した人としても有名です. その後も丹下氏の公共建築のDNAを引き継ぎ
「香川県立武道館」や「瀬戸内海歴史民俗資料館」など建築作品の豊富な香川県の公共建築の礎を築いた立役者として活躍. この記念館は85年の独立後に手がけた作品です.





神殿のような外観をしたこの記念館ですが、じつは東側に設置された階段から展望台へと登ることができます. 四方の小ピラミッドのある屋根を中間の踊り場スペースとして配置させ、最上階中央部の展望台へとつなぐ階段は、各ピラミッドを『結ぶ=橋』という意味が込められています. 階段をぐるっと回りながら沙弥島・瀬戸内海、そして瀬戸大橋を見渡すアプローチは圧巻もの. ぜひ一度登ってみることを推奨します.
瀬戸大橋の歴史も学べ、瀬戸大橋を見渡せる展望台にも登れる神殿のようなユニークな記念館建築. 沙弥島へ訪れた際はぜひ一度ご来訪ください. ではでは今回はここまで〜
◆ この記事に関連する建築マップ
・
瀬戸内建築マップ - 岡山・香川の瀬戸内海を中心とした建築マップ
- 関連記事
-
コメント