


それでは高知市屈指の繁華街「はりまや橋」側となる南側の外観から. 県外アクセスのメインターミナルであり、高知市内を訪問するならばまずお目にかかることになるのがこの駅. 『くじらドーム』と称された駅舎はホーム全体を覆う巨大なアーチが特徴で、とさでん交通の路面電車が乗り入れる南側はくの字に曲げられた鉄骨によって大きくホーム内部が外に開けた豪快なファサードになっています.
この駅舎はかつて地上駅だった高知駅を高架化するため、2008年に新しく整備された3代目. 設計を手掛けたのは建築家 内藤廣氏で、このサイトでは
「JR旭川駅舎」で初紹介しました. 内藤氏の手がける駅舎建築はどれも斬新かつデザイン性に富むものばかり. 余談ですが私は先程の「JR旭川駅舎」と宮崎の「JR日向市駅舎」そしてこの駅舎を総じて『内藤氏の三駅舎』と呼んでいます.





こちらは北側の外観です. 先程の西側のファサードが同じく反対にもあるのかと思いきや、こちらは全体的に屋根で覆われまるっきり閉じた印象. 駅前広場からは内藤氏の十八番ともいえる木の集成材がホームを覆う素晴らしいアーチを見ることができます. この駅舎最大の特徴は、この大屋根が駅の高架部分を飛び出して地上部分のキャノピーまで伸びていることです.
駅舎の設計で内藤氏は、常に新しいことに挑んできた土佐の風土に見合う『今までにない駅舎』を目指し、駅前の広場と駅ホームが一体となったこの大屋根を考案します. しかし鉄道高架から屋根が飛び出したことで、本来除外対象な建築基準法の法規が適応され『耐火建築物にする』という法規的な問題をクリアする事態になりました. 一見何気ないようにみえる大屋根ですが、この
駅前広場まで飛び出すというのは鉄道駅舎史上初となる大胆な試みでした.




それでは内部へと入ります. 当初は「JR旭川駅」のような木材で覆われた空間を想像していたのですが、改札部分は一般的な高架駅舎の設えと大差がなく少し残念でした. ドームがこれなので、内部も思い切ってほしかったものです. ホームにあがると、木の集成材で覆われたダイナミックなドーム屋根が眼前に飛び込んできます. トップライトのみの採光のため、雑誌で見たよりも内部は暗く感じますが、まさに日本一の森林県である高知を象徴する素晴らしい木のドームです.
ドーム屋根は集成材のアーチ構造の下に鉄骨トラスを組み上げた混構造. 南側開口からは「はりまや橋」のある高知市の繁華街、更に奥には高知市の南にある鷲尾山蓮峰が連なる素晴らしい展望が望めます
(写真4枚目). 上から自然光を送るトップライトにはもう一つの仕掛けがあり、全車が気動車である土讃線列車の煙を逃がすための排煙ユニットとしても機能しています.




屋根を詳しく見ていきます. 約38mという大架構のアーチは、およそ縦1列あたり3〜4パーツほどに分割して組み立てています. 構造部をよく見ると表面の色合いが微妙に違う接合部
(写真3枚目)が見えますが、ここでは大きなボルトを外から締めず、集成材の内側に金属板を挟み込み短いボルトで締めることで、ボルト跡を目立たさず一本の連続した木のアーチのように見えるように工夫されています. これは『かんざし工法』と呼ばれ「表面にボルトが見えると木が痛々しい」と構造担当の川口衞氏が考案したもので、構造家の熱意が垣間見える面白いディティールです.
しかしながらホームで撮影をしていると、電車の接近メロディーとして『アンパンマンマーチ』がホーム内に響き渡ってきます. これは『アンパンマン』の生みの親 やなせたかし氏が高知県で生まれ育った関係で採用されたものですが、木の威厳のあるホームにこのメルヘンメロディーのギャップにガクッときて「よりによってそれかよ!」と突っ込んでしまいそうになりました. 高知に来た際は是非一度見てみてはいかがでしょうか. ではでは今回はここまで〜
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