高知県立坂本龍馬記念館 - ARCHI'RECORDS(アーキレコーズ)- 建築紹介・建築探訪録        

高知県立坂本龍馬記念館

           
0090:高知県立坂本龍馬記念館 メイン

0090 - 高知県立坂本龍馬記念館
竣工:1991年
設計:高橋晶子+高橋寛 / ワークステーション
住所:高知県高知市浦戸城山830
賞歴:1992年JIA新人賞

皆様どうも. 4月もそろそろ終わりを迎える時期ですが、ニュースを見ているとゴールデンウィーク関連の行楽特集がちらほらと見られるようになってきました. 多くの人にとっては数少ない行楽イベントとなる時期ですが、ホテルがハイシーズン料金になったり、観光客でごった返していたりと色々窮屈なので、毎年この時期はあまり出歩かないようにしています. 建築めぐりも人いっぱいでは大変ですので…

ではでは高知建築の続きとまいりましょう. 舞台は高知の南、太平洋を一望できる観光名所『桂浜』からです. かの坂本龍馬が愛した場所として知られ、あの有名な坂本龍馬像もこの浜近くの高台にあります. 今回紹介するのはこの浜の裏山に建つ坂本龍馬専門の博物館 高知県立坂本龍馬記念館です.
0090:高知県立坂本龍馬記念館 桂浜

0090:高知県立坂本龍馬記念館 龍馬像

0090:高知県立坂本龍馬記念館 桂浜からの水平線

博物館へはJR高知駅からとさでん交通桂浜線、もしくは『my遊バス』を利用します.「龍馬記念館前」もしくは「桂浜」バス停が最寄りで、所要時間はルートにより差がありますが40分〜1時間と、市街地からは少し遠い位置にあります. 意外なことにJRからの直行便ってないんですね〜

折角なので少しだけ桂浜を. 浜からみえる海岸線は、島一つ存在しない本物の水平線. 青白いグラデーションの大空にマリンブルーに輝く太平洋、そしてその浜辺を歩く人々を撮るというの非常に絵になります. 調べてみると龍馬像が見る視線の先は一切の島を介せずソロモン諸島まで届くそうです. 浜だけかと思ったのですが、近くには闘犬センターだったり水族館があったりとレジャースポットが豊富でした. ちなみに遊泳は禁止されていますのでご注意を.
0090:高知県立坂本龍馬記念館 西外観①

0090:高知県立坂本龍馬記念館 西外観②

0090:高知県立坂本龍馬記念館 西外観③

0090:高知県立坂本龍馬記念館 西外観④

龍馬記念館は桂浜の裏手にある高台の上、土佐国の大名 長宗我部元親が築城した平山城『浦戸城』の城跡地に建っています. そのためバス停からの道のりは少しきつい上り坂が続いていますので注意です. 幕末偉人の建物ですと吉田松陰の「松下村塾」など和風な建物が多い印象ですが、記念館は非常にモダンな外観をしています. 外壁ほぼ全てをミラーガラスで覆い、太平洋の方向までグーンと飛び出た展示室は、一度見れば忘れられないほどのインパクトがあります.

奇抜な外観をしたこの記念館の設計を担当したのは設計事務所『ワークステーション』を主宰する建築家 高橋晶子(たかはし あきこ)氏と高橋寛(たかはし ひろし)です. 特に晶子氏は建築家 篠原一男氏のアトリエに従事していたこともあり、一説ではアトリエ時代に個人でコンペを勝ってできたそうで、この龍馬記念館は同氏が世に大きく知られる処女作にもなっています. 高知では他にも幾つか手がけており「テレビ高知新本館」や「佐川町立桜座」も同氏の設計です.
0090:高知県立坂本龍馬記念館 東外観①

0090:高知県立坂本龍馬記念館 東外観②

0090:高知県立坂本龍馬記念館 東外観③

0090:高知県立坂本龍馬記念館 東外観④

0090:高知県立坂本龍馬記念館 東外観⑤

全面ガラスのまわりを朱・青・白などカラフルな金属板(スパンドレル)で仕上げた直方体ボリュームで囲っています. 海側の広場には、ゆかりの短歌が印字されたテトリスブロックの形をしたユニークな照明灯(写真4枚目)があるのですが、これも高橋氏デザインでしょうか. 建物東側から太平洋に向かってミラーガラスをみると、ちょうど水平線が窓枠と平行になって実にワイドなオーシャンスクリーン(写真5枚目)になっていたのが感動的でした.

高橋氏がこの記念館で根幹としたのは『ロマン』で、龍馬に結びつきやすい『ロマン』を建築としてそのまま具現化するとこうなったそうな. 確かにそのロマンによってできているものは、龍馬像の向く太平洋にドーンと突き出た動線を有するダイナミックなものですが、形態的な意味合いがもう少し欲しいところ. しかし日本初の新婚旅行や会社設立などで新しいもの好きとして知られた龍馬だからこそ、こういう外観が許せてしまうのではないかと考えたりもしています.
0090:高知県立坂本龍馬記念館 内観①

0090:高知県立坂本龍馬記念館 内観②

0090:高知県立坂本龍馬記念館 内観③

0090:高知県立坂本龍馬記念館 内観④

0090:高知県立坂本龍馬記念館 内観⑤

それでは500円を支払って入場. 向かうはガラス張りだった「常設展示室」のコーナーです. 常設展示には龍馬が愛用したピストルをはじめとした資料が展示されています. 鉄骨注が一部緑色にペイントされていたりとカラフル要素が見えるのですが、それ以上に驚かされるのはその柱をぶち抜くように通されたケーブルです. じつはこの展示室はケーブルによる吊り上げ構造なのですが、一部では「頭上注意」の張り紙があったりパネルの前を横切ったりと縦横無尽に飛ぶのは全国探してもここだけしょう.

内部には他にも実寸大の小屋など大きなものも設置されており、細長いの外観のわりには狭い印象. 新建築の写真のような太平洋を奥に見渡せる広々した空間なかった等ガックリする点もありますが、展示室の先まで行けば太平洋のオーシャンビューが広がっていました. 浦戸山の頂上部ということもあってその展望は超ワイドで、天気が良ければ室戸岬から四万十市の海岸線までをぐるりと一望できる、文字どおりのロマンさ溢れる素晴らしい展望スポットでした.
0090:高知県立坂本龍馬記念館 レストスペース

0090:高知県立坂本龍馬記念館 立ち入り禁止となったスロープ

0090:高知県立坂本龍馬記念館 展望広場①

0090:高知県立坂本龍馬記念館 展望広場②

0090:高知県立坂本龍馬記念館 展望広場③

最後に展示室の階段を昇って屋上へ向かいます. 中二階には椅子・テーブルが備え付けられた休憩スペースがあるので、足を休めながら太平洋を見ることができます. 同階には出口へと通じる鉄骨トラスの美しいスロープがあるのですが、こちらは一部閉鎖されていました. 元はスロープから直接屋上へと通じていたんでしょうか. 今となってはわかりません.

展示室よりも高い位置にある屋上フロアからも、ご覧のように島一つない太平洋を一望することができます. 当日は海風だったため、山の高台にあるここまで潮の香りが漂っており、展望的にも匂い的にも癒される心地よいスペースとなっていました. 建築としては外観が奇抜で賛否両論のある記念館ですが、海を一望できるロマンさは本物です. 龍馬の気分に入り浸りたいのであれば是非ここへ足をお運びください. ではでは今回はここまで〜

【追記】この龍馬記念館は2016年12月31日をもってリニューアル工事のため長期休館に入り、次のオープンは2018年1月となる予定です.


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