



稱名寺へはとさでん交通の路面電車に乗って「枡形
(ますがた)」駅で降り、南にある鏡川方向の道路を進んで2本目の交差点を左に曲がるとすぐに見えてきます. 外観はなんの変哲もない普通の寺院なので、これが建築スポットというのは一目では全くわからないでしょう.
入口の山門を入るとすぐ左手には緑の生い茂る前庭と池が見えます. 屋根の中央部は少し上がってトップライトになっているようです. 寺院ということで少々気を引き締めてたのですが、寺院の方が気さくな方でホッとしました. 一緒に連れていたワンちゃんがトコトコと後を追ってくるのがすごく可愛かったのを覚えています. というかお寺ってペットOKなんだなってここで初めて知りました.




前室
(写真1枚目)を経て本堂へやってきました. 御本尊である阿弥陀様が座する壇の上に目を向やれば、格子状に立体的に美しく組み上がった貫構造の冴える素晴らしい木造架構が本堂全体を覆います. 真上のトップライトから日差しが差し込み、朱色を帯びたスギ材架構の上部から白い光が広がる様子は、天から仏様が降りてくるような神々しさを感じさせる幻想的なものとなっています.
設計を手掛けたのは高知生まれにして同県を代表する建築家 山本長水
(やまもと ひさみ)氏です. 「高知県立美術館」の設計にも携わり、「高知県立中芸高校格技場」では建築学会を受賞. 建築家だけでなく高知大学、高知工科大学などで後進の育成にも携わっています. コンセプトは『光あふれる浄土』
(発表当時の寄稿文のテーマ)で、東大寺南大門の大仏様に習った構造にトップライトを当てることで本尊や同全体の荘厳
(しょうごん)を演出しています.





もう少し堂内を細かくみてみましょう. この空間には構造や仕上げを含め、古来から伝わる職人技の数々が凝縮されています. 朱色のように赤みがかるスギ材には、江戸時代中期から用いられる日本古来の顔料である弁柄
(べんがら)が丹念に塗られています. そのスギ材を用いて組み上げられた架構は、釘などの金物類は一切使わない伝統構法によるもので、昔ながらの構造と現代的な要素を織り交ぜた洗練美に満ちたものとなっています.
貫の間の白壁には土佐漆喰がムラなく塗られ、ベンガラの赤と土佐漆喰による白が交互に並ぶ珍しいものとなっています. 本堂後ろ部分の扉を閉めると、写真のような火灯型のデザインが施された障子が太陽に照らされて浮かび上がります. これも土佐和紙を扱う職人がなせる技. 架構の構造美に驚かされるだけでなく、土佐職人の技巧に身近に触れることができる寺院建築はおそらくここだけ. 解説してくれた寺院の人には本当に感謝です.



後ろの障子窓を開けて、前庭へと移動しました. 広縁まで伸びるベンガラ塗りのスギ板は、南の太陽の日差しによって煌々たる朱色へとその表情を変えます. 屋根の軒裏に太陽反射した池の波紋が綺麗に投影されるところ
(写真1枚目・3枚目)も個人的にはグッとくるポイント. 本尊って玄関から奥にあるイメージがあったのですが、前庭と一体的に連続するこのロケーションというのも実に見事で素晴らしいものだと実感しました.
ということで今回の紹介はここまでです. 当日は私たちだけでしたが、寺院の人に聞くと多い時はバス数台が前に止まって大勢押しかけるそうな. 注意点としてあくまでもこちらは阿弥陀様の座する寺院本堂ですので、ある程度の礼節と仏様の感謝の念をもって見学して欲しいところです. それでは今回はここまでとします〜
※googlemapでは「称名寺」と表示されています.
- 関連記事
-
コメント